17話
壮絶なまでに整った容姿の杖化け物が、
「しきたりにより此方の番を迎えにまいった」
「…つが…い、ってなに?」
高校に通っているけど、どちらかというと体育が得意な翔颯は何時も通り言葉の意味が分からないと復唱した。
翔颯の反応に杖化け物は一瞬眉を動かしたが、構わず続ける。
「しかし此度の番は未熟。故に不相応と判断す」
「…?」
ますますを持って意味が分からず、翔颯は困惑を顔に出す。
なのに教えてくれない。
いつもなら教えてくれるのに。
目の前の男性は本当に昨日まで構ってくれていた杖化け物なんだろか。
翔颯は一瞬訝しんだ。
けれど声は同じだ。
目も同じ。
だから自分とお話してくれた杖化け物、だと思う。
けれど様子が違うから。
翔颯はあんなにまた会いたいって思っていたのに、少し嫌な落ち着かない気分になる。
「よって此度の番の儀を無効とす。此方はそれに同意する。其よ、同意すると申せ」
同意以外は赦さない、そんな雰囲気が漂う。
翔颯は杖化け物と正面向き合いたくて椅子に横座りした。
「同意したらどーなんの?」
至近距離、杖化け物に見下ろされている、けど恐ろしくはなかった。
少し嫌で落ち着かないけれど、彼のひとの視線は優しい。
それに良い匂いがした。
思わず手を伸ばしかけた翔颯は、流石に子供じみてると己を律し膝の上で両拳を握り締めた。
「此方の番では無くなる。案ずるなこれも縁。其の身の振り援助を約束しよう。早う同意すると申せ」
同意以外受け付けない。
金の双眸がそう語ってくる。
門外不出の美麗なる切れ長な眼。
不思議とずっと見つめていられる。
幸いなのは恐怖で圧してこない事だ。
言霊を使ってこないのも、嬉しい。
全然優しい。
だから翔颯は目の前の人外に口ごたえばかりする。
「にーさん、だからさーつがいってなにー?」
「…其はここで何を学んでおるのだ…。人間で言う所の嫁である、嫁。其よ、早う同意せい」
「ん?何で嫁…?」
ますます分からない。
嫁になるって?
自分が?
杖化け物の?
「…此方の…杖を…其が…此方の元へ…」
言い淀む杖化け物に翔颯は目をパチクリさせた。
そして昨夜のやりとりを思い返す。
杖を運ぶ事をすごく止めさせたがっていた。
そして恐い目にあうぞ言われた。
それでも渡したら受け取ってくれた。
悲しい、諦めた様子で。
翔颯が自分で答えを導き出すまで杖化け物は何も言わなかった。
僅かな鎮痛の面持ち、ほんの少しの苛立ちを伏せた瞼に閉じ込めて。
「…杖、運んだから?それで嫁?」
疑問に対して首肯で返された翔颯は、ちょっと口が開いてしまった。
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