15話
聞けば調べれば、おとし子は誰しも彼もがこういう目にあっているようだ。
後1年巡れば卒業だ。
そしたら就職し自活する。
なるべく国の世話にならないようにすればいい。
でも逃れられないと、調べれば知るほどがんじからめ。
じゃあ最初から独りの人間はどうやって生きていけと。
施設には他にもおとし子は居るけれど、基本的に交流は無い。
禁止なのだ、なんででも。
減らぬおとし子。
蛍光してる色の三原則がマーブルった次元穴汚れを体中にくっつけて、他人ばかりの街彷徨う泣き喚く。
次元の穴を通過した影響らしく、その瞳の目の色は明度低めな虹色だ。
それが不気味だって目を合わされない。
それがこわいから触れない。
泣いているのに。
誰も傍に居ないのに。
そういう、子を。
なんで、区別するのか。
杖化け物が居るような世界だから、そうなっているのかどうか。
「…はぁ…」
また息を吐いてしまう。
でもこれは溜息ではない、嘆息だ。
杖化け物の声を手と、杖を思い出してしまったからだ。
杖化け物。
小さな太陽が燃える杖、すごく綺麗だった。
低い声、すごく素敵だった。
金色の瞳、もっと見つめていたかった。
あのすべすべな褐色の手、触れてみたかった。
総じて優しいお兄さん。
杖化け物だなんてとてもとても、思えない。
最後まで姿は見れなかった。
けど年上のお兄さん、きっと格好良いに違いない。
そういう妄想を翔颯は膨らませてしまう。
それからそれから、楽しいやりとり。
あれは楽しかった。
ああいうのが普通。
だからよりいっそう。
うん、いっそう。
あんな別れ方が、さみしかった。
杖届けなければ良かった。
でも昨日が最後だって言うから。
今夜行ってももう居ない。
寂しさと後悔。
そして再会を心の底から望んでしまう。
杖化け物とまた会いたいだなんてああ、おかしな子だおとし子だ。
杖化け物の事を思い出した翔颯のスプーンが止まる。
翔颯が止まったとて誰も気にしない。
同級生たちからは冷たくあしらわれている。
教諭たちもそんなに親身になってはくれない。
食堂の職員は知らないのか、営業だからか普通なほうだ。
アルバイト先でも結構冷遇されている。
養護施設の職員は優しい仮面を着けているだけ。
誰もかれも他人だ。
だったらやっぱり杖化け物の方が優しかった。
何も掬ってないスプーンを噛んで、美味しくないと眉間にシワ寄せた。
それと同時だった。
金属音が食堂に鳴り響いた。
隅々まで響き渡る高音で、騒がしい食堂が一瞬で静まり返る。
そして誰しもが音の根源を見た。
翔颯ももれなく音がした方向に目を向けていた。
向けさせられたとも言えた。
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