肝試しをするときはこれに気を付けよう

歪祈

本編

 これは僕が大学3年の夏のこと、今でも忘れられない記憶だ



 その日大学の友人と学食で雑談していた時、ふと友人の一人が「肝試しをしないか?」と言い出した。特に予定もなく暇を持て余していた僕たちはその提案に乗り近場の心霊スポットなどを調べたり、時間を決め、一旦帰って再集合することにした。


 そして夜が静まったころ、友人の一人に車を出してもらい街から離れたところにある心霊スポットに向けて出発した。移動の最中、車内では緊張するだとか、数珠を持ってきたなどとりとめもないことを話していた。ちなみに僕は伯方の塩を2㎏を用意した。


 着いたそこは近くに明かりがなく、スマホが圏外を表示し、ただ風が木々を揺らす音だけがする場所だった。友人たちが心霊スポットに入ろうする中、僕は言いようもない恐怖を感じ、足が動かなかった。結局僕は恥ずかしながらビビり残った。ただ暗闇の中で一人でいるのも心細く、懐中電灯で意味もなくあたりを見回してみたり、電波の届かないスマホをいじり気を紛らわせていた。この時、少しでも早く戻ってきた友人たちと合流できるようにと思っていたのか、はたまた一人車という密室の中でいることに恐怖を感じたからかは分からないが、車で座って待っていればいいのに馬鹿な僕は車の外で待ち続けた。


 しばらくすると友人たちが何かから逃げているかのように慌てながら戻ってきた。そんな様子のおかしい友人たちに僕は先ほどまで心細かった反動かのんきに「何、なんかあったの?」とのんきに話しかけていた。まぁ、友人たちはよほど慌てていたのか僕に気づかず横を通り過ぎていき、車に乗り込んでいた。その反応に僕は「えぇ…」などとのんきな反応をしていた。この時すぐに友人たちを追い車に乗り込んでいればまた違った結果になっただろうに、その時の僕はこの後どうなるかなんて想像もしていなかった。



 そろそろ勘のいい人なら、いや勘がよくなくてもこの後の展開が予測できたと思う






 そう、車が走り出したんだ。僕がまだ外にいたのに車が走り出したんだ。友人たちが車を走らせたんだ。全員乗ってるか確認せず走らせたんだ。僕を置いて走らせたんだ。それに気づいた僕は叫びながらすぐに走って追いかけ何とかリヤワイパーを掴むことができた。叫びながら車体をたたき止めようとしたが、結局車は速度を上げ僕を置いて行った。結局一人明かりもない道を懐中電灯で照らしながら夜通し歩き街を目指した。

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