守銭奴探偵アズマ

江葉内斗

プロローグ

 私がこの美術館に就職してから二年がたった。

 それは、私が陸上選手の夢をあきらめてから三年がたったということでもある。


 私はこの生活に満足している。給料はいいし、館長さんも優しいし、それに給料も悪くない、むしろ東京都内でも高いほうじゃないかと思う。流石は金持ちの町がね区というべきか。


 でも、何かが足りない。

 学生時代、毎日のように仲間と切磋琢磨しあって来た生活を思い出すと、この生活はまるで味気ない。まるでワインの搾りかすからさらに抽出されたワインのようだ。

 このまま私は、ずっと味気ない生活を続けるのかな……



 この時二〇二三年四月一日。

 それから一か月後、彼女の人生は大きく変貌する。あずまとしゆきという、史上最強の癖を持った探偵によって。

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