第4話:マックにて
side.
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マックにつき、私はチーズバーガーセット。不木崎はビッグバーガーセットを頼んだ。
男の子だからいっぱい食べるんだね…!私も食べてもらえないかな…!
ここでも不木崎の男を感じて興奮してしまう。私の性癖は今までにない速度で更新されていく。……罪深い男め。
「ねぇふっきー」
「なんだ?ポテトは上げないぞ。自分でナゲットを選んだんだろ」
「あぁ、うん」
「……何で当たり前のように人のポテト食べるの?」
「ほら!こっちあげるから」
「いや、ナゲット全部ひとかじりするってどんな食べ方だよ。……まぁもらうけど」
そう言いながら不木崎は私のかじりたてナゲットを口に放り込む。
「……」
ねぇ!!ねえ!これもう私のこと好きなんじゃないの!?普通女の食べかけのナゲット食べる?食べないよね?好きなんだよね!?(錯乱)
……っと、危ない。こいつ油断しているとすぐ告白させようとしてくるな…。ドスケベ検定一級か…?目的を見失うなよ…春……!
気持ちを落ち着かせようと、私はコーラを飲む。
そうだ、惚れさせるのだ。今は完全にぐっちゃぐちゃのびっちょびちょにされている私だが、まだ挽回の余地はある。あるはず!
とりあえず、明日からゴールデンウィークだ。ここで他の女子と差をつけるしかない。
やっぱナゲットとポテト合うよなーと朗らかに笑う
「ふっきーゴールデンウィーク暇?」
「うーん、暇だなぁ。本読んで過ごすくらいか……あ、でも明後日は出かけるわ」
「あーそうなんだ。……近くの美術館で池田華展があるから一緒行きたいなって………思ったんだけど」
「え!?城も行くの?それそれ!俺の明後日の予定もそれ!先言えよコノヤロウ!一緒行こうぜ!」
まさか不木崎も行くとは思わなかったが、予定通り……!見ろ!見えないしっぽがぶるんぶるん振られてる様が見て取れる。
歓喜の表情を隠そうともしない。ほんとすき。
それからしばらく談笑して、食べ物はなくなり、飲み物もラストスパートへ差し掛かっていた。
……そろそろ連絡先を交換したい。だってほら、明後日のこともあるし?てかLINEしたいし?
ただ、苦節15年生きてきて私は一度も男にLINEを聞いたことがない。なんならこうやってまともに雑談したこともないのだ。神は一体私にどれほどの試練を与えようというのだ……!
「あ、そうだ。城のLINE知らないや。交換しよ」
……え?
思い出したかのように不木崎はスマホを取り出しQRコードを見せてきた。
見透かされたように急にきたので、私の体はみっともなくビクッと跳ねた。
え……こいつヤリチン?何今のスムーズな感じ。嫌味ないし急にくるしさりげないし。心臓いくつあってもたりないんだけど。
「いいよー」
さも、『ああライン交換ね?おっけおっけ、すっげー慣れてるわ』感を出しつつスマホを取り出す。
本来ならお金を払って土下座をしながら読み取らなければならないものである。しかし今回は惚れさせることが目的。私はあえて、交換してやるか感を演じつつ、QRを読み取った。がっつくなよ私…。
不木崎のLINEアイコンを見ると青々とした山の写真だった。なぜ山。
ちなみに私は妹に取ってもらった夕日をバックにイイ感じの逆光が入ってる引きの写真だ。(写真目線ではない)結構カッコよく撮れている。
…にしても。
「何で山なの?」
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「何で山なの?」
こいつのアイコン写真やたらかっこいいなと思っていたら、城が形の良い眉を吊り上げて言う。
山…?なんだろう。あ、俺のアイコンか。
この謎の山写真は俺が設定したわけではなく、俺が入る前の不木崎くんが設定したものなので理由はわからない。
好きだったんだろうか、山。
「なんとなく」
「なにそれ」
ほんとにな、なにそれって感じ。
ただわからないものは仕方ない。どこかで俺もかっこいい写真に変えておくか。…まぁ?俺、モテるわけですしぃ?(LINE友達数2人→NEW! 3人)
城は、あ、じゃあさ、と急に笑顔になると、俺のとこまで近づいてきて、顔を俺の横へセットする。すごく近い。
そのままスマホを天へ掲げた。自撮りというやつか…。本当に女子高生はこういうの好きな。
間近で見てもその解像度は変わらない。やはりとんでもない美少女だな……こいつ。普段から何食ってたらこんな絹みたいな肌になるんだよ?
化粧っ気もあまりないというのにその肌は透き通っている。更にいい匂いすんだものな…女の子って不思議。
カシャっと音がして、満面の笑みで城が席へ戻る。出来を見ているようだが、どんどん顔が赤くなっていった。
後から自分の行動が恥ずかしくなったのだろうか。胸ばかり大きくてもまだまだ子供だな…ガァル?
城はスマホをこちらに向けてくる。
「ちょっと見すぎ」
おや?
写真には城の顔を凝視する俺の姿が映っていた。どうやら恥ずかしいのは俺だったようだ。
「いや、何事かと思って」
言い訳くさいが、これは事実だ。
「スマホかして」
まだ顔が赤いままの城は手をこちらへ出す。
手のひらも桜色だ。小さい手が可愛らしい。
特に断る理由もないためスマホを差し出す。どうせ連絡先家族と城くらいしかいないし。
スマホを手渡すと、ポチポチなにか操作をする。そのまま、んっと俺にスマホを返してきた。まだ顔が赤い。
「こっちの方が山よりいいっしょ」
先ほどの写真がアイコン化されていた。
僕たちリア充です!みたいな頭悪そうなラブラブカップルアイコンだ。しかも絵面的に俺がベタぼれしてしまっている図っぽいのがなんか悔しい。ただおっぱい見てなくて良かった。
まぁ、誰に見られるわけでもないし(LINE友達3人)。城のおっぱいを四六時中見られるようになったし。
断ればこの巨乳JKは泣きそうになるだろうし……別にこのままでいっか。
「じゃあ、明後日美術館いくから連絡は…明日すればいっか」
「アイコンの件無視すんな!感想言え!なんか反応しろ!」
城が真っ赤な顔で早口にまくし立てる。
恥ずかしいのに何で聞くんだ……?
「頭悪そうなカップルみたい」
「か、カップルじゃない!頭も悪くないし!」
うわー、初心。初心だねー。好きをド直球で伝えてくる女子は多いが、隠してくる女子は珍しい。
バレバレだけどね。流石に20人以上に告白されれば何となくわかる。
でも頼むから告白してくるなよー…多分断るし。
この心の疲労は実は結構深刻だったりする。最初こちら側に来た頃なんか、コンビニ行くだけでも立ち眩みで気を失いそうだった。こんなんでどうやって生活してたんだって話だけど、不木崎くん引きこもりだったみたい。ちなみに今は大分落ち着いてきたが、女子が性的な視線を向けてくるときは疲労度が爆増する。
それに、彼氏彼女の関係なんてこの世界ではなおさら体の関係の意味合いが強い。
今襲われたりなんかしたら一生癒えない心の傷がつく自信がある。『なんだァ…?この硬いのはァ…?嫌だと言っておきながら……体は正直だなァ、んんぅ?』を地で行くのがこの俺不木崎くんなのである。
この体になって二か月。俺が体になじんで、もっと心の方も落ち着いてくれたら全然ウェルカムなんだが。
なんたって城は話してみて思ったが接しやすい。他の女子みたいに下心丸出しな感じはあるが、なぜか下手にこず、こちらを転がしてこようとしてくる下手くそお姉さまムーブをかましてくるから、見ていて可愛らしいし飽きない。
他の女子は結構獣じみているので、接して間もないが彼女は既に癒し枠に入っている。
ふっと笑うと城は目を吊り上げた。
「今馬鹿にした!」
「した」
「そういう時はしてないって言うの!」
「してない」
「嘘つき!」
「むちゃくちゃやん?」
side.城春
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その日の夜。私はニヤニヤしっぱなしだった。
スマホには今日新しく友達になった人物が写っている。
「なんでまだアイコン変えてないんだよぉっ!ふざけんなっ!もうっ!もうっ!もうっ!!!!!」
「お姉ちゃんうるさいんだけど!」
妹に怒鳴られながら布団をゴロゴロする。
ホントにあいつはしょうがないやつだ。
あ、そういえばふっきーに借りた本読まないと…明後日までに読んで感想言おう。
えっとなになに…【あくる日の便り】ね。
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