女嫌いのイケメンは、全ての恋愛フラグをスルーする。

第116話 愛莉ちゃん貞操の危機。

対面キッチン（風）のリビングへ案内すると、大和さんはテーブルに並べた料理を見て目を輝かせた。

「美味そー！！これ全部俺の為に作ってくれたんだよね？」

「あ……まぁ…、大和さんの為っていうか…」

もともとは颯斗の為に買った材料だけど、この嬉しそうな笑顔を見たら言えるわけがない。

曖昧に笑って頷くと、私達は２人で向かい合うようにテーブルについた。

どちらからともなく「いただきます」と言うと、早速２人で食べ始める。

「あ、サーモンのサラダ？俺サーモン好きなんだよねー」

大和さんは嬉しそうにサーモンとオニオンをまとめて口に運ぶ。

「良かった、サーモンとオイルドレッシングのサラダ…何となく食べたくて。私も好きなんです、サーモン。美味しいですよね」

「うんうん、サーモンとクリームチーズのベーグルサンドとか大好物！駅前のパン屋に行くとよく買うんだよねー。あ、行った事ある？」

「はい、美味しいですよね、あのお店。でも直ぐに売り切れちゃうから。午前中に行かないと行けないのが不便ですよね」

「午前中って忙しいもんねー」

今回の料理はいつも颯斗に作るような料理じゃなくて、全体的にオシャレなメニューでまとめた。

（別に見栄を張るつもりじゃないけど…、いつも颯斗と食べてる田舎のご飯じゃ、もてなし料理っぽくないもんね…）

颯斗との食事の時は、テーブルの上は全体的に茶色い。

オシャレとか気にせず、私と颯斗の好きな故郷のご飯を作る事が多いからだ。

でも今回はもてなし料理って事で、全体的に都会的でオシャレな洋風メニュー一択にしている。

（この手のメニューって苦手なんだけど…）

颯斗は確かにイケメンでカッコいいけど、子供の頃から知っていて自分を良く見せる手間がない。

自分の食べたい物を作っても、颯斗の食べたい物を作っても、特に気にならない。

でも大和さんは颯斗ほどでなくてもイケメンだし、何より都会的な雰囲気だ。

（まさか都会のイケメンを招待するのに、田舎料理ってわけにいかないし…、いや別に都会に劣等感がある訳じゃないけど…！）

今時のオシャレなお店や家では、どんな食事やメニューなのか、ちゃんと調べて作った。

（喜んでもらえて良かった…）

ホッとしながら食べていると、大和さんが「そういえば…」と切り出した。

「颯斗と食う時も、いつもこんな豪華なの？」

「えー？まさか…、颯斗と食べる時はもっと地味な家庭料理ですよ。それに…いつもなんて食べてないです！」

颯斗の名前が出た瞬間、苛々が甦ってしまい、私は語尾荒く答えると、ぱくぱくと料理を口に運ぶ。

すると大和さんは飲んでいた缶ビール（自分で買って来た）を、空になった私のコップへ注ぎ入れた。

「……飲めば？なんか苛ついてるみたいだし、パーっと食べてグイグイ飲んで、気分転換しようよ。コップと缶だから、ちょっと雰囲気出ないけどね」

「……頂きます」

言われるままにビールをグイッと飲み干すと、大和さんは気分良く、新たにビールを注いでくれる。

普段あまりビールは飲まないんだけど、仕事終わりやストレス解消に、世の父親達がビールを飲みたがる理由が分かった気がした。

#大和side ────

単純だなー。と思いながら、俺が勧めるままに酒を飲み干して、ダウンした愛莉ちゃんをソファに運んで見下ろす。

…どれくらい飲ませたっけ？

俺が買って来たお酒は、ビールも他のヤツも、ほとんど愛莉ちゃんに飲ませた。

（一人暮らしなのに男を部屋に入れて、言われるままに飲んで、おまけに酔っ払って寝ちゃうなんて…ちょっと危機管理が足りないかなぁー…）

彼女でもない女の子の部屋に来て、しかも泥酔させた俺が言う事じゃないけど。

無言でソファの傍に座って、愛莉ちゃんの寝顔を見つめる。

やっぱり可愛い。

ぶっちゃけ愛莉ちゃんが颯斗を好きなのはバレバレだけど…、颯斗は完全に気付いてないし…。

（颯斗がいらないなら…、マジで俺が貰っちゃおうかな）

健康的に焼けていて、それでもなめらかな肌は、触り心地が良さそうだし。

肉付きは良くないけど、この細さが逆にたまらない。

（少し乱暴に抱いたら壊れそうな感じ…、抱き潰してみたくなっちゃうよね）

「愛莉ちゃーん…？」

声を掛けてみるけど、起きそうにない。

「愛莉ちゃーん、このまま寝てると悪い男にイタズラされちゃうよー？」

つい…と首筋をなぞりながら声を掛けても、愛莉ちゃんは微動だにしない。

（俺は颯斗と違って、チャンスがあれば食っちゃうタイプなんだよね）

どうやら完全に熟睡していて起きないみたいだ。

酒も入ってるし…、まぁ仕方ないか。

俺は上着を脱ぐと、ソファで横になっている愛莉ちゃんの上に、ゆっくりと跨った。

ソファがキシ…ッと音を立てるけど、愛莉ちゃんはやっぱり起きない。

これがチャンスでなくて、何がチャンス？

愛莉ちゃんが着ているＴシャツの裾がめくれて、引き締まったウエストとお腹が見える。

おー、腹筋割れてる…！！アスリート系なんだなー。

（愛莉ちゃんは日に焼けてるから、日に焼けてない隠れた部分の白さが目立って、逆に見ちゃいけないトコを見てる感じが背徳感あって興奮する）

普段は服に隠れてて日に焼けてない腹の色が、本来の肌の色なんだろう。

「………」

眠っている愛莉ちゃんを見下ろした俺は、その耳元に顔を寄せた。