第4話条件すり合わせ
「……見返りは?」
お!
凄い時差があった気はするけど、一応納得? してくれたみたい!
「見返りは、奴隷解放です! 解放後は国に戻っても良いですし、この国で働きたければ推薦状を用意します! あ、市民権も欲しければ、フォンデルク辺境伯領であれば作れます! 旅立ちたい場合もサポートします!」
「……は?」
凄い! 眉間にシワをよせつつの怪訝顔も素敵!
“イケメン”(美形男性の事を言うらしい)はどんな顔でもイケてるって本当だね!
そかそか。まだ、前線行く前だったし、ゲームの時よりは表情筋が仕事しているかも!
……そんな素敵な美丈夫に赤銅色の奴隷の首輪は似合わないなぁ。
「スチュアート、奴隷解放の手続きはどうなっている?」
「どのように処理するかにより異なります。シルバリウス様は行方不明扱いと死亡扱いどちらがよろしいですか? もし、国に戻って地位復権等をお望みであれば一旦行方不明扱い、こちらの国もしくは今迄の功績を全て捨てても良ければ死亡扱いに致しますが?」
シルバリウスが先ほどより更に驚いた顔をしている。
良いよ〜!
このまま表情筋鍛えれば、ゲームの時みたいな口の端を上げるだけの微笑んだ? レベルじゃなくて、正真正銘の微笑みが見られるかもしれない!
まぁ、でも急に行方不明か死亡かって言われても困るよね。
死亡扱いだと冤罪が晴らせないどころか、一度は騎士団長次期候補とまで言われた過去実績まで捨てることになっちゃうし。
「シルバリウス様、取り敢えずゆっくり休んで決めたら良いですよ!
まだ牢から出たばかりで、強制的にこちらに連れてこられただろうし。
こちらを信用出来なかったら逃げても良いけど、取り敢えずここにいればその隷属の首輪を外す予定なので、もうちょっと辛抱してくれると嬉しいな。
スチュアート、回答期限は? それから隷属の首輪除去までどの位かかる?」
前半はシルバリウスに言って、後半はスチュアートに聞く。
「そうですね。回答期限は1週間後まで、ただ誤魔化している状況が続くのでなるべく早い方がありがたいですね。それから、隷属の首輪自体は回答後1週間いただければ大丈夫かと」
「だそうです。今日はゆっくり休んでください。そして、よかったら明日からランチを一緒にしましょう!
無理はしなくて良いので気が向いたらいらしてくださいね。
使用人を呼ぶ時はそこのベルを鳴らしてくれれば大丈夫です。それではお先に失礼しますね」
まだもうちょっと話していたい気はするけど、シルバリウスも魔力吸牢から出たばかりで魔力枯渇寸前の状態から回復中の筈。
16歳の成人までの魔力枯渇状態の繰り返しは、魔力総量が上がる為問題ないが、成人後以降の魔力枯渇状態の繰り返しは逆に魔力回復がしにくくなり、結果魔力総量を減らしていく事になり寿命を縮める事になるのだ。
確かスチュアート調べで2年ちょっとは幽閉されていたらしいからね。
しっかり生シルバリウスを目に焼き付けて、自室に戻った。
もしかしたら、今日の夜には居なくなっちゃうかもしれないからね。
いやぁ、普通に考えて起きたらいきなり知らない国に居たら驚くよね。
それに警戒もするだろうし。
だから逃げてしまったら逃げてしまったでしょうがないと思っている。
少なくとも死亡エンドが回避される可能性が出てきたのだし。
シルバリウスが素直だったり慎重なタイプだったりした場合は、最長2週間もこの屋敷に居てくれるなんて凄い。
同じ空気吸っちゃうんだよ?
あわよくばランチ一緒に出来るかもなんだよ?
目の保養と一緒にランチとかお喋り出来たら、もう思い残す事はない気がする。
だから、さっきから感じるスチュアートの視線も気が付かない振り。
こうして元気に振る舞う為に、きっと魔力補給の頻度は増えるだろう。
その分寿命も短くなるだろうけど、あのシルバリウスと一緒にいる時間が増えるって事だからね!
何物にも代えがたい貴重な時間になるよ!
いつもより、いっぱいご飯が食べられて幸せな気分を味わいながら、生シルバリウスを目蓋の裏にのせその日の1日を終えた。
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