第15話 お風呂②
ネーコはお構いなしに手前まで接近してきた。
片方の手はタオルの胸元を、もう片方の手は裾あたりを押さえながら、ネーコはそのなまめかしい脚をゆっくりと一本ずつ「ちゃぷん、ちゃぷん」と湯船に投入する。
それからしゃがんで身体を湯に浸からせると、ざぱぁっとお湯が溢れた。
「フミヒロ様?なぜ横を向くのですか?」
「い、いや」
俺は必死に目を逸らしていた。
「フミヒロ様?」
「......」
露出面積だけで言えば裸エプロンの方が大きい気がする。
しかし、興奮度は今の方が優っている。
理由はおそらく......
(俺も裸だってこと!?)
その事実が妙に興奮度を押し上げた。
(自分も無防備......)
そう思うと、目前の事象がねっとりとした生々しさを帯びてふつふつと
「フミヒロ様」
ネーコはしびれを切らしたように俺の顔を濡れた両手で押さえて、無理矢理グッと俺に正面を向かせた。
「な、なにすんだよ?」
「私を見てください」
「で、でも」
「そんなにあからさまにそっぽを向かれたら、ネーコはさみしいです」
「だ、だって」
「タオルを巻いていますし湯に浸かってもいます。ですから見えるものも見えません」
「かといってこの距離で正面向くのはちょっと......」
俺がやっばり横を向こうとしても、
「ダメです」
ネーコはそれを許さない。
「わ、わかったよ。わかったからもう顔を押さえないでくれ」
「本当ですか?わかりました」
ネーコは手を離した。
「......」
「どうしましたか?」
「い、いや、なんでもないよ」
「そうですか」
俺はあらためて、目の前の湯船に浸かる美少女アンドロイドをじっと見る。
美しい長髪は風呂湯で傷まないようにまとめ上げ、うなじが
雪のような肌は火照ってあたたかい色味がにじみ白桃のように
こうやって見ると、とてもじゃないがアンドロイドだとは思えない。
そう思うとより胸のドキドキが増して、荒ぶる中学二年生男子の肉感を
「フミヒロ様?」
「い、いや!」
俺は視線は落とした。
だって......
(ネーコがかわエロすぎるから!)
ところが、ちょうどそのタイミングで事件が発生する。
「あ......」
ネーコにぴったりと巻かれていたはずのタオルが湯の中でハラリとはだけてしまったのだ!
「ね、ねねねネーコ!タオルタオル!」
「すみません。湯に邪魔ですね」
慌てふためく俺をよそに、ネーコは落ち着いてタオルを湯からパチャンと取り上げて、浴槽の縁へ置いた。
「!!」
熱き海にボヨンと浮かぶ二つの柔らかき小島。
そこからさらに視線を落としていけば、そこにあるのはおそらく......
生命の深淵たる女神の出入り口。
俺はほんの一瞬だけ湯船を覗いてからすぐに目を
「フミヒロ様。私、全裸になっちゃいました」
「ネーコ!タオル巻いて!」
「そのためには立ち上がらなくてはなりませんよ?今、この状態この距離で立ち上がるとどうなりますか?」
「どうなるって......」
そんなもの答えは簡単。
ネーコの真実が眼前に
「フミヒロ様が望むなら......」
「いやいや待って待って!!」
「あら、もしかして......私が立ち上がる前に、フミヒロ様がたちあがっていらっしゃってます?」
「!」
俺は咄嗟に両手で下腹部を押さえた。
「洗って差し上げましょうか?」
ネーコはうっとりと微笑みながら言った。
「いやいいから!」
「イイ?」
「ダメ!」
「だけどホントは?」
「してほしい......じゃなくて!ダメダメダメ!」
「方法は?て?むね?おくち?」
「どれもダメ!」
「まさかフミヒロ様。すま...」
「言わなくていい!」
「でも、張り詰めた空気は今のうちに抜いておかないと破裂してしまいますよ?ほら、息抜きも大切ってことです」
「意味がわからない!」
「イキ・ヌキです」
「強引にそっちへ持ってくな!」
「強淫?」
「もうやめてくれぇぇ!!」
叫びながら、俺は勢いよくザバァーッ!と浴槽から抜けだしてバスルームから飛びだした。
「フミヒロ様ぁ〜ミッションコンプリ〜ト!国家救済へまた一歩前進です〜!」
背中越しにネーコのいつものあの言葉がエコーがかって響いていた。
「う、う、ううう......うおぉぉぉぉぉ!!」
俺は謎の雄叫びを上げながら二階への階段をダダダダッと駆け上がっていった。
オトナの階段は
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