第4話 結婚と子作りか…(千影視点)

 健司が玄関の扉を開けて出勤したのを見計らって、ワタシは階段を下りる。

お見送りする2人の邪魔をしたくなかったし…。


「おはよう、千影」

姉さんがワタシに気付く。


「おはよ。昨日はよく寝れた?」

この家で過ごす最初の夜だったからね。気になるのは当然だ。


「隼人君のことを少し考えちゃったけど、早めに寝れたわ」


「そう。なら良かった」

やっぱり姉さんにとって、倉式君はかけがえのない人なのね…。


「これからあんたと麻美ちゃんの分を作るから待ってて」


「ありがとう、よろしくね」



 テーブルの椅子で待機してる時に麻美ちゃんが呼鈴を押したので、ワタシが応対して家に上げた。


「…良い匂いがする」

麻美さんの表情が緩む。


「そうね。姉さんの料理が楽しみだわ」


座る場所を悩んだけど、ワタシと麻美さんが向かい合うようにした。

姉さんがどっち側に座るかは、気分で決めるでしょ。



 ……少し待った後、机に全てのメニューが並んだ。マーガリンとジャムが半々に塗られたトースト・サラダ・紅茶・バナナが入ったヨーグルト…。


一番目を引くのは、キノコがたくさん入ったスクランブルエッグかしら。…本当に多く入ってる。間違いなく、姉さんの方がキノコ好きね。


結局、姉さんは麻美さんの横に座った。その着席後に全員で「いただきます」を言ってから食べ始めるワタシ達。


「千影。あんたの部屋と配信する部屋は、掃除しなくて良いわよね?」


「そうね。1階を中心にお願いするわ」

自分の部屋と配信部屋ぐらい、自力でやらないとね。


「任せて」


家事のことは姉さんに任せて、ワタシは麻美さんのことに集中しよう。

誰かを指導したことなんて、一度もないからなぁ…。



 「ねぇ千影。さっき三島君にも訊いたんだけど…」


「どうかした?」

健司とワタシの2人に訊くことって、何があるかな?


「あんた達って、結婚とか子作りする気ある?」


「え!?」

まったく考えてない…。


「その反応、考えてないのね。三島君と同じよ」


「健司もなんだ…。結婚すらしてないのに、子供のことを訊かれるのは予想外よ」


「2人とも30過ぎてるんだし、結婚は意識してもおかしくないでしょ?」


姉さんの言う通りだと思う。けど…。


「今の関係がちょうど良いと思うのよね。名字が変わると、手続きが面倒だから」

現状なにも困ってないし、このままで良いと思ってるけど…。


「確かにね。…2人が同じ考えで良かったわ」


…気が向いた時に、健司と直接話したほうが良いかも?



 姉さんが作ってくれた朝食を完食したワタシ達。この後は、麻美さんにVTuberのノウハウを教えるつもりなんだけど…。


正直なところ、うまくいく気がしない。ワタシが教え慣れていないのもあるけど、最近はゲーム実況する女性VTuberは珍しくない。


つまり、ライバルがとても多い状態なのだ。ワタシなりのベストを尽くすけど、麻美さんは26歳と若いし、場合によっては厳しいことを言う覚悟を持たないと。


「後のことはあたしに任せて」

姉さんがワタシと麻美さんを観て伝える。


ここは遠慮なく頼ろう。


「お願いね。……麻美さん、ワタシの配信部屋に行きましょう」


「…はい」


ワタシ達は席を立ち、リビングを出る。

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