ゴブリンは狩りをします2

 戦い方を覚えるだけでもだいぶ違うものだと教えた側ながら感心する。

 血の臭いを嗅ぎつけて他の魔物が来る前にとドゥゼアはナイフを取り出してオークを解体し始める。


 目的は主に肉なので適当に切り裂いていく。

 自分たちで食べて、あとは交換用にでも持っていければいいので綺麗に切り裂く必要もない。


 ザックザックと切り裂いていくとポロリと魔石も出てきたので回収しておく。

 持ち運びやすいサイズに切り分けたあとは大きな葉っぱで包む。


 出来るだけ多く持っていきたいので染みないようにこうした工夫をするのだ。


「えいっ!」


 かなりデカめに切ったお肉にユリディカが枝をぶっさす。

 これは今日食べるお肉で少し移動してから焼いて食べようと思って雑に持っていくために枝を刺した。


「あとは他の魔物が食って綺麗にしてくれるだろう」


 欲張りすぎても持っていけはしない。

 ある程度お肉を確保したところでオークの解体を切り上げる。


 そろそろ日も高くなってきたので昼時である。

 オークの死体から早めに離れながら途中で枝を拾っていく。


「ここらでいいかな」


 オークを倒したところからはだいぶ離れたところまでやってきた。

 木々もまばらで草が少なく地面が露出している。


 焚き火をして肉を焼くのにも良いだろう。


「準備!」


「はい!」


「ん!」


「みんな元気だね」


 ドゥゼアとユリディカで拾ってきた枝を集めて山にする。

 そこにオルケが魔法で火をつける。


「レビス!」


「これでいい?」


「……完璧だ」


 洞窟でダンジョン攻略している時には思いつかなかったのだけど冷静になった時にやってみたいと思っていたことがある。

 ドゥゼアはレビスに金属を薄く伸ばしてもらって鉄板を作った。


 適当に石を積み重ねて柱として鉄板が焚き火の上に来るようにする。

 肉を串刺しではなく鉄板で焼くことをやってみたいと考えていたのだ。

 

 そして鉄板を温めている間にドゥゼアは枝に刺して持ってきたデカ肉を細かく切っていく。


「何してるの?」


「油塗っておくとくっつかないんだよ」


 程よく鉄板が温まったところでオークの脂身を先に乗せてぐりぐりと脂を塗り広げる。


「いくぞ……」


「…………おお〜!」


 ドゥゼアが厚めに切った肉を鉄板の上に乗せる。

 ジュワ〜と聞き慣れない音がしてユリディカの尻尾が興奮にぴーんと立つ。


 もっと細かくスライスしても良いがみんなのことを思えばステーキの方が好みだろうと思った。

 大きめの鉄板なので同時にみんなの分を焼く。


「さらに!」


 ドゥゼアは荷物の中から袋を取り出した。

 中には白い粉。砂糖ではない。


 以前であった魔人商人のゲコットからは砂糖だけじゃなく塩も買っていた。

 わがままを言うのなら胡椒も欲しかったのだけどそれは売ってなかった。


 ひとまず塩を取り出してステーキにパラパラとかける。


「ま、まだぁ?」


 つつーっとユリディカの口の端からよだれが垂れる。


「うむ……いいかな」


 ここにいるのはみんな魔物である。

 ステーキも良く焼きにする必要はない。


 軽く表面を焼いて中は血が滴るぐらいがいい。


「これぐらいで良いか」


 適当に葉っぱの上にステーキを乗せて差し出す。

 ユリディカの尻尾が激しく揺られる。


「美味しそ」


「うーん、いい匂いですね!」


 珍しくレビスもキラキラとした目でステーキを見ている。


「よし、食べよう!」


 次の肉を鉄板に乗せて食事の開始とした。

 こうしてみんなの食事の風景を見ているとそれぞれ性格があって面白い。


「うまー!」

 

 ユリディカはステーキを鷲掴みにしてむしゃむしゃと食べる。

 元気があって大変よろしい。


「美味し」


 レビスはあまり手を汚したくないのか適当に尖らせた金属でぶっ刺して一枚持ち上げて食べている。

 ユリディカよりは多少落ち着いた感じであるがそれでも口いっぱいに頬張って食べる。


 普段は無表情に近いレビスも食事の時はニッコリする。

 美味しそうに食べていて大変よろしい。


「美味しいですね!」


 オルケは余ったナイフを使ってステーキを切り分けている。

 人間であった時の習性はなかなか抜けないのだけどこうでしょ!とユリディカにワイルド喰いを教えられてやってみてからと言うもの一口は大きくなった。


 元々の体よりも口が大きくいっぺんに多めに食べた方が美味しく感じるので今もざっくりと切り分けて食べている。

 なんだかんだ魔物な体にも慣れて美味しく食べてて大変よろしい。


「はぁー、満足!」


 かなり大きめに持ってきたお肉だったけどほとんど食べ切ってしまった。

 ちょっと膨れたお腹をポンポンと叩きながらユリディカは地面に寝転がる。


 ユリディカの気持ちも分からないでもない。

 イタチ肉も悪くないなと思っていたけどオーク肉の足元にはとても及ばない。


 人間であってもオークは食べるぐらいなのでかなりいいお肉なのである。


「そうだ……あれも確かめるか」


 ドゥゼアは洞窟にいる間色々と考えてみた。

 敵もいないし落ち着ける環境で何かを試してみるのにもよかったからだ。


 レビスの鉄板もその時に思いついていたものになる。

 なんだかイタチ肉はちょっとパサついていて試す気にならなかったのでいい肉が手に入ったらと思っていた。


 ちょうどオークがいたので試してみたら大成功だった。

 ただ他にも考えていたことがある。

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