ゴブリンはお宝奪取を目論みます2

 ひとまずこれで島までのルートは確保した。

 あとはどう宝箱を奪うかであるがこれも一応考えてある。


「一度戻る……大丈夫か?」


「だ、だいじょうぶですぅ」


 元来た方に戻ろうと思ったのだけどそこにはオルケが丸太にしがみついているので通れない。

 ドゥゼアは小さくため息をつくと逆方向に歩き出す。


 時には体のバランスが悪いのかバランス感覚の悪いゴブリンの体だったこともある。

 だからオルケの気持ちも分からなくない。


 オルケはゆっくりと丸太にしがみついたまま移動する。


「んじゃ準備して宝箱を奪うか」


 反対岸に辿り着いたドゥゼアとユリディカは湖の縁を歩いて休んでいるレビスのところまで戻ってきた。


「どうだ?」


 体力回復のために焚き火で肉を焼いて食べていたレビスに声をかける。


「うーん……まだダメ」


 魔力不足も最初のように使い果たしたりはしない。

 全身の気だるさぐらいでとどめているけれど魔力不足の症状まで出ると中々回復してこない。


 しかし宝箱を奪う準備にもレビスの力は必要である。

 焦るものでもないしのんびり回復を待つ。


「ひーん!

 みんな待ってよぅ!」


 そうしている間になんとか丸太を渡り切ってオルケも走って戻ってくる。

 ちゃんと見える位置ではあるので放っておいても大丈夫だろうと思っていた。


「その体もバランス感覚は悪くなさそうなのにな」


「うぅ……私が悪いんですぅ!」


 オルケに水筒を渡してやる。


「んく……ぷはっ、もう中身無くなっちゃったよ」


 持ってみて軽いなとは思ったけれどとうとう空になってしまった。

 みんなで木を切りながらここに留まっているので水がなくなるのも早い。


「……汲んでくるか」


 水がないのは困る。

 肉はどうにか手に入れられるが水は無理。

 

 超重水は汲むこともできないので外に出て水を汲んでこなきゃならない。

 レビスの魔力の回復も考えると水を汲みに行ってもいいだろう。


「レビス、オルケ、ここで待っててくれ。

 ユリディカ、行くぞ」


「あいあいさー!」


「えっ」


「お留守番ですかー?」


「そうだ」


 見張りが必要だと。

 ダンジョンの中がどうなるのかドゥゼアにもよく分かっていない。


 少し目を話した隙にこの丸太の橋が綺麗さっぱりリセットされてしまう可能性もある。

 それが目を話したら起こるのか、離れたら起こるのか、あるいはみんながダンジョンから離れたら起こるのか、もしかしたらしばらく維持されることだって十分ありうる。


 だが少なくとも誰かがいれば簡単に丸太の橋がなくなることはないだろう。

 誰かと言っても1人だけでは魔物が出た時に対処が困難ななるかもしれない。


 だからドゥゼアとユリディカ、レビスとオルケに分けた。

 移動には危険が伴う。


 ユリディカがいれば早めに敵の存在を感知できるし強化や治療をすることができる。

 地図を把握しているのはドゥゼア。


 移動の素早さを考えて、迷子にならないことを考えるとユリディカとドゥゼアの組み合わせがいい。

 そして湖の周りは木が少ない。


 見晴らしが良くて敵の接近にも気が付きやすい。

 オルケの魔法も使いやすくてレビスの槍でも戦いやすい。


 レビスそのものも休ませてあげたいしこの分け方がベストである。


「まあ危なくなったら逃げろ。

 戦うにしても無理はするなよ」


「ん……分かった」


 やや不満そうなレビス。


「少し水を汲んでくるだけだ。

 ここを任せたぞ」


 不満は分かるがしょうがない。

 ドゥゼアはユリディカと共にダンジョンの出入り口となっている家を目指す。


「ドゥ、ゼア、っと、2人っきり〜」


 ユリディカはドゥゼアと共に行動できることが嬉しそう。

 ルンタッタしているユリディカと真っ直ぐに出入り口に向かう。


 真っ直ぐに向かえばそう遠い距離でもない。


「ユリディカは楽しいか?」


「んー?

 うん、すごく楽しいよ」


「危険な目にあったりしているが……それでもか?」


「確かにたくさん危険な状況になったりしてるけど生きてる!って感じがする!」


 ダンジョンの中にいて頭に響く声に従って戦わされていた時とは大きく違う。

 あの時も危ない時はあったけど戦うしかなく傷つけることも傷つくことも嫌だった。


 今だって傷つくことは嫌だけど戦いもみんなと協力したり考えて戦うことは楽しい。


「辛くないのならそれでいい」


「ドゥゼアといれて私は幸せだよ?」


 パッタパッタとユリディカの尻尾が振られる。

 なんとなくだけどユリディカのいたダンジョンからユリディカを任されたような感じがしていた。


 だからって行動を変えるつもりはないがユリディカが苦痛に感じているなら平穏に暮らせる場所を探すことだっていとわない。


「もっと色々見てみたい……ドゥゼアとレビスと、オルケも一緒ならいいな」


「お前は優しいな」


 ドゥゼアが手を伸ばすとユリディカは立ち止まって腰をかがめて頭を差し出す。

 撫でてやるとより強く尻尾が振られて目を細めて気持ちよさそうにする。


 レビスも魔物にしては割と変な性格をしているがユリディカも変だ。

 けなしているわけではなくて明るくて前向きなあまり魔物としては見ない良い性格をしているのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る