ゴブリンはコボルトにお願いされました3

「困った時に助け合いをすることができるのは素晴らしい。


 もちろんオレの知ることならなんでも教えよう」


「助かる。


 その前に、困っているのはお前らの方だろう?」


「グガ、そうだ。


 出来るなら……助けてほしい」


「まず何があったか聞かせてくれ」


 これで人間と戦いになっているなどとのたまうのならさっさと逃げろとアドバイスをしてドゥゼアも立ち去るつもりだ。


「最近森に変化があったのだ。


 他の魔物が動いて、色々と縄張り争いが起きている」


 コボルト族長は悩ましげに頭を振る。


「長いことここに住んでいるがある時同族が襲われた。


 犯人はウルフだ」


 なんだか毛皮率たけぇなとドゥゼアは思った。

 ウルフは動物に近い方の魔物であり、二足で立って歩くコボルトやワーウルフと違って四足歩行である。


 戦闘能力としてはコボルトより上でワーウルフよりも下なのであるが厄介なのは単体の能力よりも群れで動く集団としての能力だろう。

 コボルトも群れているが単に寄り集まっているだけ。


 危機になったら互いに助けようとするが連携して戦うという意識はかなり薄い。

 それに比べてウルフは集団として連携して戦う。


 個体ではワーウルフに敵わないが何体かで連携して戦えばワーウルフでも倒すことができるだろう。

 縄張りとしてはコボルトとも似たような感じの場所に構えることが多い。


 今回は何かウルフが移動せねばならない事情があってコボルトの縄張りに目をつけたのだろう。


「行く先を探してみたけどどこにもない」


 コボルトだって戦わないのならその方がいい。

 しかし周りで良さげなところはすでに占領しているものがいる。


 どこかに行っても戦いになるし勝てる保証もない。

 逃げられる場所がないのなら戦うしかないのだ。


 非情な魔物の世界である。


「相手の数は?」


「分からない。


 偵察に行かせた同族は帰ってこなかった」


 たとえコボルトがウルフの倍いても戦いに勝つのは難しかろう。

 相手の数が少なければ少ないほどいいがウルフもバカではないので勝てるだけの数はいると推測できる。


 知能が低くウルフよりも足の遅いコボルトでは相手を偵察することすらままならない。


「それでゴブリンに助けを求めたのか」


「グガ、そうだ。


 ゴブリンは敵じゃない。


 オレたちがウルフに倒されると奴らも困るはず……だった」


 これまでの話を聞いていてもゴブリンから協力に関して色良い返事が得られなかったことは確かだろう。

 ゴブリンが何を考えているのかゴブリンであるドゥゼアにも分からない。


 勝ち目がないと思ったか、実はそんなにコボルトをよく思っていないのか、はたまた別の事情か。


「共に戦ってくれると嬉しい。


 だが強制はしない」


 すがりついてでも共に戦ってくれと言いたいところだろうにコボルト族長はそうはしなかった。

 ワーウルフがいてくれたら心強い戦力にもなるはずだけどよそ者を強制して戦わせることはできないと考えている。


 思っていたよりも知恵がある。


「ドゥゼアどうする?」


「私はどっちでもいいよ」


 レビスとユリディカがドゥゼアの様子を伺う。

 ドゥゼアが戦うなら戦うし、逃げるなら別にそれだっていい。


「……ウルフの肉は腹一杯食わせてもらうし、魔石は全部もらう」


「それでは……」


「コボルトだからと舐めてかかっているウルフに痛い目見せてやろう」


 ドゥゼアが笑った。

 それだけでレビスとユリディカはなんだか勝てそうな気がしていたのであった。

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