ゴブリンはコボルトにお願いされました1
ユリディカも知能が高く物事を考えて行動出来る。
考えて動ける仲間が増えて狩りも楽になった。
適当に動いて強い魔物の縄張りに入ってしまっても危険なのでグロヴァの町の周辺をそんなに離れないようにしながらどこへ向かうか検討していた。
冒険者と鉢合わせる危険はあるが冒険者の話を盗み聞く目的もあった。
ワーウルフを狙っていた冒険者がダンジョンから帰ってこなかったがワーウルフの姿も見られなくなった。
そのことから冒険者たちはワーウルフを狙っていた冒険者がワーウルフと相討ちになったのだと予想していた。
ダンジョンの魔物を相討ちで倒したからといって英雄にはなれない。
むしろ人々はワーウルフを狙っていた冒険者のことを愚かであると笑っていた。
何度も挑めるし逃げられるダンジョンで魔物に固執してやられた馬鹿な冒険者であることになった。
夜遅くまで潜っていたために遺体すら回収できずわずかな遺品のみが床に転がっていたのでより哀れさが浮き彫りなった。
もっぱら冒険者の間での話はこの冒険者の話が主だった。
あとは次の強化個体はどうなるのだとか、どこの飯屋の娘が可愛いだとかくだらない話しかなかった。
根気強く冒険者の話を聞いてまとめていくと周辺の魔物の強さも分かってきた。
都市周辺はそんなに強くないのだけど北側は進んでいくにつれ魔物が強くなっていく。
そしてダンジョンがある側もダンジョンまでは良いがダンジョンを通り過ぎて奥に行くと魔物が強いらしい。
ドゥゼアたちがグロヴァに来た南側や東側は森が広がっていて魔物もそんなに強くない。
冒険者はある程度グロヴァで経験を積むと南にある都市に向かうようだ。
グロヴァから直接東の方に伸びている道はない。
なのでドゥゼアたちはグロヴァの東にある森を通って南下してみることにした。
「他の魔物の話も聞いてみよう」
森の中で生活しながらも情報収集する。
ゴブリンであるドゥゼアがワーウルフであるユリディカと対話できるように魔物同士であれば対話が成り立つこともある。
敵対的でなければ会話できることもあるので魔物と話して情報を得られる可能性もある。
特に今見つけたいのは未踏破ダンジョンである。
初心者ダンジョンは悪くなかったが人の出入りが多すぎる。
そこで未踏破ダンジョンを見つけたいのだ。
未踏破というがその意味としては人が発見していないダンジョンのことである。
魔物ならば人里離れていてまだ人に見つかっていないダンジョンのことを知っている可能性がある。
「出来ればコボルトあたりを見つけたいな」
コボルトは流浪の魔物である。
別に旅したくて旅しているのでもないことも多いらしいが割とあっちこっちと巣を移していることが多い。
ゴブリンが固定の巣に執着するので同じような強さの魔物でも違いがあるのだ。
コボルトも多少の知恵を持つ魔物であって対話が成り立つことがある。
ゴブリンとも敵対的でないこともままあるしコボルトはそうしてフラフラと移動したりするのでダンジョンについて知っているかもしれない。
だから意外とゴブリンの巣でも受け入れてやると良い友人になったりするんだけどただのゴブリンではそんなこと思いついたりしない。
「いなけりゃ多少の危険はあるけど強い魔物探すかだな」
弱いゴブリンであるが弱いことの利点もある。
実は比較的他の魔物に襲われにくいのだ。
なぜかといえば弱いから。
魔石も品質が悪く、体に肉は少なく、倒しても旨みというものがない。
だから他のゴブリンよりも強い魔物が積極的にゴブリンを狙うかといえばそうでもない。
邪魔な存在なので人はよくゴブリンを狩るのだけど強い魔物は近くにゴブリンがいても目障りにならなきゃ手を出してこないのだ。
むしろ話を聞くなら強い魔物を探した方がいいかもしれない。
広めの縄張りを持つ単体で生活する魔物がいれば話をできるチャンスがある。
「なんか臭い……」
「臭い?」
「もしかしたら……」
ユリディカが顔をしかめて鼻を押さえた。
ドゥゼアとレビスには分からないけど何かの臭いがするらしい。
「コボルトが近くにいるのかもな」
コボルトは犬のようにマーキングして自分の縄張りを主張する。
ゴブリンは洞窟などを巣穴にするがコボルトはそうではなくマーキングをすることによって一定範囲を自分の巣にするのだ。
ただこのマーキングに使うのは尿であり、これが結構独特の臭いを放つのだ。
鼻の良いユリディカが臭いを感じたということは近くにコボルトがいるかもしれない。
「臭いが強くなる方は分かるか?」
「ふえ……あっち」
「行ってみよう」
今の戦力ならコボルト相手にも負ける気はしない。
レビスも魔石を食べて少し力強くなり、槍で戦う技術を学んで一般的なゴブリンよりもかなり強いと言える。
ワーウルフはゴブリンに比べると遥かに格上の魔物だしコボルトなんか相手にならない。
「臭いが気になるか?」
「ふぁい……」
「魔力の操作で少しマシになるぞ。
鼻から魔力を離れさせるんだ」
「わけわからない……」
「いいからやってみろ。
魔力を集めることの逆だ」
「分かった」
ユリディカは歩きながらドゥゼアに言われたように魔力をコントロールしようとする。
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