ゴブリンはダンジョンを目指します1

 巣を持ち、集団で生きるゴブリンがそのどちらも失えば哀れと言わざるを得ない。

 それでなくとも最下層の魔物なのに家なき2匹のゴブリンでは最下層の中の最下層だ。


 それでもこれまで度重なるゴブ生で経験を積んできた。

 ドゥゼアとレビスはまず巣から離れることにした。


 巣周辺のゴブリンは探されているだろうし、巣がすでに潰されているので初心者冒険者でもゴブリンの残党と見れば積極的に襲いかかってくる。

 そのために獲物を見つけて狩りをしながら移動をしていた。


「ダンジョンに向かおう」


 木の根に囲まれた空間を見つけたのでそこでレビスと身を寄せて隠れる。

 今後どうするかを考えるがこれはかなり難しい問題であった。


 ゴブリンは弱い。

 だから取れる行動の幅が狭い。


 本来なら巣があってそこで力を蓄えておきたかったのだけどそれも出来なくなった。

 このまま狩りを続けて少しずつ力を蓄えていくつもりはあるがそれでは強くなるのにいつまでかかるか分からない。


 1つ手っ取り早い方法は装備を整えることだ。

 けれどこの方法には問題がある。


 ゴブリンがどうやって装備を整えるというのだ。

 手作りで盾ぐらいは作れてもそんなもの戦力強化の装備にはならない。


 普通の装備、もっと理想的なものは能力を上げたり不思議な力を持つ魔道具が手に入れば簡単なのだが手に入れるのが簡単ではない。

 普通の装備を狙うなら人を襲うのがいいがゴブリンが勝てる相手などまずいない。


 勝てる相手だったとしてもそんな相手の装備なんて高が知れている。

 つまり人を襲って装備を整えるのは現実的に無理な話。


 魔物として強くなるのにも人を喰らうのはいい方法なのだけどひとまずある程度強くならねばこの計画は実行できない。

 堅実な方法としてはどこかに拠点を定めてちまちまと狩りを繰り返して力を溜めることだがそれでは人を倒せるようになる前に寿命を迎える。


 拠点を探すのだってリスクがある。

 自分たちが弱いので魔物が弱いところに拠点を置きたいが良い場所は他の魔物が巣や縄張りにしている。


 さらにそうしたところは人に近く、見つかって倒されるリスクが大きい。

 では人里離れるとどうなるか。


 魔物が強いのである。

 ゴブリンでは到底太刀打ちできない魔物が支配している領域になる。


 そんなところ運良く場所があっても狩りができない。

 ならどうするのか。


 ずっと考えていたことがドゥゼアにはあった。

 ダンジョン攻略をしたらどうかと。


 ダンジョンとは不思議なものでその中には魔物が生み出されるのだけど同時に人に有益なアイテムも生み出されて置いておかれることがある。

 原理など誰も知らないのだけどそうしたアイテムを狙って多くの冒険者たちがダンジョンを攻略しに行く。


 中には魔道具なんかもダンジョンに落ちていることもごく稀にあり得ることでそれで英雄になった人や大金持ちになった人もいた。

 せめて何かの装備を手に入れることができれば今後生きるのが楽になる。


 魔物がダンジョン攻略するなど聞いたことがない話だけどしちゃいけないとも出来ないとも聞いたことがない。


「ドゥゼアが行くなら」


 レビスには今後どうやって生きるのか皆目見当もつかない。

 だからドゥゼアに考えがあるならそれに従う。


 ドゥゼアのためになるなら。

 ドゥゼアと共に生きられるならとレビスは考えていた。


 ーーーーー


 ダンジョンを探すと言ったがダンジョンの場所を知っているのでもない。

 そもそもここがどこであるのかも分かっていない。


 巣にはあれだけの道具があったのだから地図ぐらいあったかもしれないなと思う。

 こっそり有益なものがないか探してみれば良かったと今更ながら後悔する。


 悩んだ結果にドゥゼアは道など人が近いところを移動することにした。

 人の存在に警戒しながら町などを探す。


 規模の大きな町があればダンジョンがある可能性がある。

 町じゃなくても道中にある案内の看板なに書いてあることもあるので探してみる。


「あった!」


 二股に分かれた道に設置された案内板を見つけてドゥゼアは期待せずに確認してみた。

 この先に何の町があるのか書いていたがその一方に“ダンジョンの町グロヴァ”と書いてある。


 もちろん人の文字など読めないレビスは何があったのかと看板を見つめてみるがその意味は分からない。

 ダンジョンがあっても難易度とかどんなダンジョンなのか問題があるがひとまず一歩前進。


「やばい、隠れろ!」


 人が見えたのでドゥゼアはレビスを引っ張って道を外れた草の中に隠れる。


『聞いたか?


 ジヌーダのやつ大怪我したらしいぞ』


『へぇ、アイツダンジョンなんて余裕だ何で大口叩いてたのに?』


『調子乗ってたからな。


 それにしても最近出たワーウルフが意外と強いらしいけどな。


 強いというか上手く戦うらしい』


『俺たちん時にはそんなのいなかったのにな』


 笑いながら話している冒険者風の男たちがグロヴァの方から歩いてきた。

 ダンジョンについての話をしていてドゥゼアは耳をすまして話を盗み聞く。


 会話を聞いていて分かったのはダンジョンの名前がデアイで比較的初心者向けの低難易度ダンジョンらしいということだ。

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