赤い糸を切ってから

@AI_isekai

赤い糸が引き千切られた

 強く結びついて離れないと思っていた赤い糸は、車に引き千切られた。


 彼女の心と僕の心を結んでいた赤い糸は、唐突に引き千切られた。


 ――刹那


 目の前で、車に轢かれそうになっている人を見た。

 僕の彼女は、その人を助けようとしたのか道路に飛び出た。


 僕は、必死に止めようと手を伸ばした。今まで出したことのないほど大きな声で叫んだ。


 それでも、彼女は歩みを止めなかった。



 必死に走って、その人を突き飛ばして自分が代わりに車に轢かれるのを望んでいるように死の間際、彼女は笑っていた。


 いつも僕に見せる満面の笑みを、死の直前でも浮かべていた。



 僕は、どうすればよかったんだろう。


 もし、僕が彼女を止めれていれば。

 もし、彼女が走らなければ、


 いや、もしあの人がいなければ――彼女も僕も幸せに過ごせていたはずだ。



 僕の顔は、酷く歪み。目の前で、飛び散っている彼女の脚や腕を眺めることしかできなかった。


 あぁ、あの人がこうなっていれば――良かったんだ。








 "俺"は気が付くと、人を殺していた。

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