誘拐少女と探偵

誘拐少女と探偵 - 1

 全身の痛みで目が覚める。


 硬い床に手をつき、ゆっくりと身体を起こすと、あちこちからポキポキという音が鳴る。あちこちが痛い。


 カーテンの隙間から漏れる太陽の光が、部屋の中を薄暗く照らしている。物が散乱してごちゃごちゃしているが、和ダンスや畳があるので和室だとわかる。


 しかし、どうにも見覚えがない。

 それに何だか異臭がする。


 目を擦るために左手を上げようとしたとき、金属のこすれる音とともに、腕が引っ張られる感触がした。左手首に目をやると、そこには手錠が掛けられていた。


 驚きのあまり、頭が冷めないままパニックに陥る。

 一体どうなっているんだ?


 そのとき、傍らから寝息が聞こえた。そこにいたのは幼い少女だった。


 髪の毛はかなり長く、前髪で目が隠れてしまっている。髪は油っぽく、手入れもされずぼさぼさとまとまりがない。まるで浮浪者みたいだ。


 すやすやと眠る少女の手首にも、自分と同じく手錠が掛けられていた。幼い少女と手錠の組み合わせはどこか歪で、現実感がない。


 手錠の先を追っていくと、僕の左手と少女の右手が手錠によって繋がれていることに気づく。


 そこで僕は思い出した。

 ここがどこで、自分が何に巻き込まれたのか。そして、この少女が誰なのかを。


 そうだった。僕たちは誘拐されたんだ。

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