第12話 襲撃者
道場の外からは重々しい騒音が響いている。一体何が起こったんだろうか。
時雨さんのスマホの音が鳴り響いた。柊さんからみたいだ。にしても、離れたところでも話せるこの道具が未だに信じられない。
『ナギ君、シュウ君、レイメイ君、面倒なことになった。私がコンビニで買い物してたら、いつの間にか外をバイクの集団に囲まれてしまった』
「こっちもです、社長。襲撃ですかね?」
『ガラス越しに様子を見るに、奴ら『プランダーズ』だね。こっちだけで二、三十人はいそうだね』
「あの黄昏さん、ぷらんだーずって何ですか?」
何だか分からない言葉だらけだったので、どうせ答えてくれないだろうなと思いつつ黄昏さんに質問してみた。でも意外と黄昏さんは丁寧に答えてくれた。
「プランダーズはこの横浜一帯を支配する半グレ集団だ。暴力行為やカツアゲ、酷いときは殺人もやらかすヤバい奴らだよ」
「えーと、はんぐれ?」
「とにかく、俺らの敵だ」
『そう。シュウ君の言う通り。あとプランダーズはこの辺りのほぼ全ての情報を把握していると言われるくらい情報網に優れているから、アイツら壊滅させれば、レイメイ君の仲間たちの情報も手に入るかもしれない!』
「分かりました。全員返り討ちにします」
時雨さんがそう言ったところで、会話は終了した。休む間もなく、今度は鬼灯さんから電話がかかってきた。
『ナギ、シュウ、レイメイ、大丈夫か!? 社に戻ったら、プランダーズの奴らに囲まれてやがる!』
「こっちもだケンタ。そっちは大丈夫そう?」
『悪い、俺はこっちに加勢しないとならなそうだ。そっちはお前らだけで大丈夫か?』
「ああ。何とかする」
そこで鬼灯さんとの会話は終わったが、僕にはすごく不安なことがあった。
「あの、会社のほうも襲撃を受けてるんですよね? 大丈夫なんですか?」
「問題ない。社の人間は全員この戦闘訓練を受けた、社長のお墨付きだ。そう簡単にやられはしない。それより心配すべきは俺たちだ。相手が何人だか分からないが、三人で全員倒さないといけない」
黄昏さんが言った。確かに、三人だけで勝てるかと言われると、少し、不安だ。でも僕は、こんなところで負けるわけにはいかなかった。
ついに、道場の中にプランダーズが入って来た。人数は見える範囲で十五人程度、全員が何かしらの武器を持っているようだ。
「来たぞ! 東雲、麻酔銃よこせ!」
黄昏さんが今までにない切羽詰まった様子で言ったので、僕はその気迫に押されてさっきまで訓練で使っていた麻酔銃を手渡した。
「眠ってろ馬鹿が!」
黄昏さんが銃を放つ。荒々しい口調とは裏腹に、その軌道は正確無比で、一人の首に刺さって眠らせた。
「まだまだだ!」
続けて黄昏さんが銃を撃とうとしたが…、
「…あれ、出ないぞ」
「あっすいません、訓練で使っていて針の補充を忘れていました…」
やってしまった。表情を見なくても分かる。黄昏さん滅茶苦茶怒っている。
「クッソ、今から射撃場まで取りに行くのも厳しいか…、仕方ない、素手でやるしかない!」
黄昏さんは格闘で戦うことにしたようだ。僕も見てばかりではいられないと思い加勢する。
「社に襲撃するならまだしも、道場を汚しやがって…、許さない!」
隣では、時雨さんが木刀を持って戦っていた。その表情は普段からは想像できないほど怒りに染まっていた。
「
時雨さんは強い踏み込みと同時に目にも止まらない速さで刀を振り、プランダーズの一人を吹っ飛ばした。そして吹っ飛んだ先にいたもう一人と衝突させ、同時に二人を気絶させた。
「すげぇ…!」
「東雲! 気を抜くな!」
黄昏さんに言われ、僕は自分の状況を再確認した。心なしか、僕の元により多くの人が集まっている気がする。
僕は体勢を低く落としてから、相手の横に回り込んで背中を蹴り上げた。
「東雲レイメイ! くたばれェ!」
鉄でできた銀の棍棒を持った男が僕に襲い掛かる。僕はとっさに背中を蹴った男を前に押し出して攻撃を防いだ。
男が仲間を殴ったことを少し申し訳なさそうにしていると、横から黄昏さんに蹴り飛ばされてノックダウンした。
「この人、なんで僕の名前を…」
「それは我々の狙いがアナタだからですよ、東雲レイメイ」
突然名前を呼ばれ、僕は驚いて振り返った。道場の入り口に立っていたのは、身長二メートル近くありそうな大男だった。髪はぼさっとしており、やる気のなさそうな目がこちらを静かに威嚇する。
「お前…、プランダーズのトップ、覇道か!?」
「そのとーり。よく知ってるなぁ。俺たちの目的は三つ。一つ、お前らアマテラスを潰すこと。二つ、柊ジンを殺すこと。三つ、東雲レイメイを捕らえること、だ」
「お前…、なぜレイメイ君を狙う!?」
「さぁ? お前らに答える意味無くねぇか?」
覇道は
「お前…、ぶっ潰してやる」
僕は覇道を睨みつけながら言った。
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設定こぼれ話
ナギが使う技は柊剣道場で教えられている「神剣流」という流派の技。勿論ジンもこの技を使える。
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