来年も、再来年も。~来年の夏も、再来年の夏も会いたい

「そろそろ夏も終わりだね」

「終わりって言っても、毎日くっそ暑いけどな」

「あはは。そうだけど、夏休みの終わりが近づくとやっぱり夏が終わるって感じがするじゃん?」


 そう言って隣でニカッと笑う顔は、まるで真夏に咲いたひまわりみたいに見えた。


「ねぇ、来年も帰って来るんだよね?」

「あー……来年は大学受験があるから、ちょっと無理かも」

「そっかぁ」


 元気よく咲いていたひまわりが、ほんの少ししおれたような表情に変わる。


「あ、でもその次の夏休みは必ず帰って来るから」

「その次って再来年のこと?」


 ウンと頷くと「再来年ってどれだけ先なんだか」と呆れたように笑われた。


「それに、再来年も会えるかなんてわからないよ」

「なんでだよ」


 毎年こうして夏休みに会っているのに、どうしてそんなことを言うんだろう。そう思ったら口が少しだけ尖ってしまった。


「だってさ、いつかは成仏するんだろうし。もしかしたら、それが来年になるかもしれないわけじゃん?」


 慌てて隣を見た。すっかり見慣れた横顔が静かに青空を見上げている。


「……再来年、きゅうりの馬なんかじゃなくて戦闘機の模型、作ってやるよ。夏休み入ったらすぐ用意する」

「あはは、なにそれ」

「帰りは……」


 茄子の牛なんて用意してやらない。毎年お供え物の隣に置いてあるけど、こっそり捨ててやる。


「だから、会えるかわからないなんて言うな」

「……うん」


 お盆なんて関係なく、毎年夏休みでこっち来た日から帰るギリギリまでこうして会っている。だからこれからも、もちろん再来年だって当然のように会えると思っていた。

 青空を見上げる横顔を見ていられなくて、同じように空を見上げた。そうして座っているブロック塀を這うようにそっと指を動かす。すぐそばにあるはずの手に触れることはできなかったけど、ほんの少し冷たいような温かいような感触がしたような気がした。

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