第179話 飛梅
小さな庭にあたしは埋められた
その家に、産まれた赤子のお祝いに
あたしは、その子と一緒に大きくなったわ
あたしが花を咲かせるとね
お父さんに肩車されて
触るの、くすぐったい
あたしが花びらを散らすとね
両手を天に広げて
花びらを楽しんでくれた
「おはよう」「ただいま」「おやすみ」
あの子はいつも声をかけてくれるの。
あたしはずっとこのまんまだと
あの子はいつの間にか大人になった
そしてね、
この家を出て遠くに行くんだって
あたしに話してくれたわ
あたし、どうしようもないもの
あの子は私の花びらを押し花にして
持って行ったわ
あたしは祈った
どうか、あたしの花びら達よ
あの子を守って
雪の降り積もる日だった
あたしに知らせが届いた
あの子に災難が
嗚呼、会いたい
あたしは自然の掟を破った
あの子の元へ
あたしは眠りから覚められないあの子を見た
起きなさい、そっちへ行ってはいけない
こっちにおいで
ほら、君の好きな花びらを
全部散らしてあげましょう
あたしの全てを
あの子は目を覚ました
あたしは、、。
それで良かったの。
掟を破ったあたし。
もう、あの子に姿を見せることは
出来なくなった。
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