第106話:呪いは忘れた頃にやってくる
でも、そんなので良いのかな?
結局別人に生まれ変わるような物だし。
むしろ人間やめちゃうし。ヒトではあるけど・・・
うん、やっぱりやめよう。
「治療してくださらないのですか?」
いくつかの方法を検討したけど、
おそらくお姉さんの望んでいる結果とは違う結果になるんだよ。
足は治ったとしても普通には歩けないと思うし、
別の方法なら身体を作り替える事も出来るけど、
人間じゃなくなっちゃうんだよ。
そんなのは治療とは呼べないんだよ・・・
「人間じゃなくなる?」
今の身体を生け贄にして悪魔と融合するんだよ。
うまくいけばお姉さんの意識が残るかも知れないけど、
たぶん、お姉さんは消えてしまうと思うんだよ。
最悪の場合は、その場で勇者に討伐されるんだよ。
このリリスはザッハトルテの中央教会の枢機卿様を助けられなかった姿なんだよ。
「枢機卿の頃の知識は残っているけど、思い出は一欠片も覚えてないんですの」
剣で滅多刺しにされて死にかけていた枢機卿様を治療したら、
偶然こうなったんだよ。今度もそうなるとは限らないんだよ。
それに、失敗したら私はただの殺人犯なんだよ。
だから、お姉さんの治療は出来ない。ごめんね。
「そんな、せっかく見つけた希望なのに諦めろだなんて・・・」
あれ?お姉さんが小刻みに震えてるんだよ。
「くやしい!もう少しだと思ったのに!」
領主様、このお姉さんはどこの誰?様子がおかしいんだよ!
「私の娘だ・・・側室の子ではあるが私の娘には違いない」
前からこんなに精神が不安定だった?
「塞ぎ込みがちではあったが、こんなに激しく激高する事はなかった!」
まだ、何もやってないよ?やってなかったよね?
「ダメでも無駄でも良いから治療を!お願い!私の足を!」
どう見ても良くない感じの紫色のオーラが溢れてきているんだよ・・・
「白ウサギ様!お願い私を殺して!もう抑えきれない!」
お姉さんの瞳が紫色に染まってるんだよ・・・
どうしてこうなった?
リリス、状況判断。
「おそらく、元々心にしまっていた思いが弾けたんですの・・・」
領主様、ご判断を。
「お父様、お願い、私が私であるうちに・・・」
ジブリール浄化できる?
「私の力では無理です」
大天使の力で浄化できないって・・・
「きゃはははは!我に力を!」
紫色の光が強くなっていくんだよ。
「せっかくグラトニーをそそのかして勇者をおびき出したのに!」
なんか、ヤバいかも!?
もしかしなくても呪いが関係してるよね?
「お父様、も・う・・ダメ・・・」
お姉さんの意識が消えかけてる!
「お願いします、娘を!」
ジブリール!私のことを頼むんだよ!
お姉さんに駆け寄って、手持ちの中で最強の祝福された黒の星1個を振りかける。
集まってきていた紫のもやが吹き飛び、虹色のもやが包み込む。
間に合ったかな?
「白ウサギ様・・・今です!とどめを!」
とりあえずお薬をいっぱいぶっかけて、さらには飲ませるんだよ!
「くそぅ!なんだこの薬は!?ふふふ、白ウサギ様特製のお薬ですわ!」
お姉さんの中で2人が混ざり合ってる?
「くそう、もう少しで強大な力が手に入ったのに!歩けないくせに何が力よ!」
なんか、お姉さんの中で言い争ってるみたいなんだけど・・・
「力さえあれば、足なんかすぐに治る!え?そうなの?ちょっと詳しく・・・」
お姉さーん!負けそうなんだよ・・・
「お?素直になったな?まずは体を作り替えないと!」
お姉さんの体が作り替えられていく。
小さく華奢だった身体が、すらりとした長い手足と、
スレンダーではあるけど女性らしさを感じさせる身体へと変化していく。
「きゃははは!これで自由に動ける!」
悪魔が完全に身体を乗っ取ったみたい。
ここで悪魔を逃がしちゃまずいよね?
リリス、ジブリール、お願い・・・
「まあ、天使としては見逃せませんし・・・」
ジブリールがつぶやく。
その手には既に神刀が抜き身のまま納っている。
「ご主人様の命令じゃあ、仕方ないですの・・・」
リリスにとっては同胞なんだっけ?
お姉さん!目を覚まして!
「ムダだ、もはや完全にこの身体は我の物だ!」
領主様、お姉さんの名前を呼んであげて!
「そうか!目を覚ますんだ!スピカ!」
スピカさん!負けないで!
ぱぁぁぁぁぁぁ
「ムダだ、我が名は憤怒のサタ・・・私の名前はスピカ!」
スピカさんが目覚めた?
「いっそのこと、憤怒の力ごと飲み込んであげるわ!」
あれ?雲行きが怪しい・・・
「これで、自由に動くからだと強大な力が私の物に!」
--そう言うわけには行かぬ--
またこの声なんだよ・・・
ドスドスドスドスッ!
スピカさんの体に無数の刃が突き刺さる。
でも、今回は蘇生効果の薬も手元にある!
全ての傷を治せば・・・
スピカさんの体が虹色の光に包まれる。
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