夏のエピローグ

   「かたつむり」

 乾いたアスファルトに

 

 かたつむりの殻が落ちていた

 

 僕はその殻を

 

 湿った落ち葉の上に

 

 そっと乗せた

 

 殻の主がにゅるりと顔を出し

 

 僕を見た

 

 その仕草がなんとも愛らしい

 

   「自転車の子どもたち」

 夏の色が残る夕刻

 

 汗びっしょりのシャツを着て

 

 自転車に乗る子どもたちを見た

 

 手足についた泥をもろともせず

 

 子どもたちは笑い合う

 

 僕もかつては彼らだったのだ

  

   「夏のエピローグ」

 嵐が近づいている

 

 この嵐が友を僕から引き離す

 

 友が去り際に僕に告げる

 

 俺が去り秋が来る

 

 その秋も去れば

 

 お前の恋人がこの地にやってくるだろう

 

 そして次の年にまた会おう と

 

 三日三晩続いた嵐が終わり

 

 昼は静けさを 

 夜は優しさを覗かせるようになった

 

 友はもうどこにもいなかった

 

 これが夏の終わりである

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る