疲労そして再起
ぼくはひどく疲れていた
疲労がぼくの身体を押さえつける
ぼくの自由を奪い
食事を 入浴を
読書を 映画を
一切合切を
忘却の彼方に追いやった
ぼくは手足と瞼の重さが増していくのを感じ
薄れゆく意識の中で
愛しき者の名を呟く
アルテミス
今宵はまだ貴方を見ていない
永遠の友──銀色に光る星々よ
まだ貴方たちに今日の話をしていない
疲労がぼくを彼らに会わせまいとして
羽毛の沼にぼくを引きずり込もうとする
ぼくは抗った
しかし虚しく引きずり込まれてしまった
友よ ぼくを許してほしい
疲労に敗北した弱きぼくを
本当にすまない
明日こそ 明日こそ必ず貴方たちに会いに行く
きっと 必ず──
ぼくは外界の扉を静かに閉じた
明くる日の陽が沈んだ時刻
ぼくはようやく目を覚ました
休日は一日を終えようとしていた
やれることはひとつしか無かった
ぼくは夜空に浮かぶ
大事な友人たちとの約束を果たしに外へ出た
ぼくは昨夜会えずじまいだったのを詫びて
望遠鏡を手にした
星々はゆるやかに
アルテミスはたおやかに輝いていた
その輝きは
愚かなぼくを許してくれているかのようだった
明日ぼくは再び
日常との激闘を繰り広げなければならない
それは宿命であり運命である
逃げることは許されない
この世界に存在している限り
安らぎは一瞬しかない
それがぼくに課せられた定めなのだ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます