中編 〜ついに始まる〜
クラリスは翌日、予定通りに任務に向かう。
用事の無かったクリスとリューにも何やら2人に託された依頼とやらが来たので、ラインハートとルーカスの出発には皆顔を出す事ができなかった、、、
─────任務当日
「そろそろですかね?ルーカスさん、ラインハートさん大丈夫ですかね」
任務中にも関わらず、2人のことが心配で集中していないクリスに
「集中だ、あの2人なら心配ない。5人の中で戦闘モードのあの2人のコンビが1番つえーからな」
「そ、そうですよね」
クリスはリューの方を見るが、リューは全くクリスの事を見る事なく、任務に没頭していた。
それを見て、クリスも自分の今すべきことをし始める。
小声で
「生きて帰って来てください」
とか細いリューの声が聞こえたのは気のせいだろうか、
「じゃあ向かうか、」
今回はポータルで入口直前まで転移するのは極めて危険であるとして、少し離れたところを転送場所に設定したために、本来の予定より少し早めに2人は動く。
周りにも関係者数人しかいない。
「ラインハート、緊張してんのか?」
「いや、全然、でも夜寝れなかった。」
「奇遇だな!俺は快眠だった」
全然奇遇ではない、真逆だ。2人とも高難易度の任務には何度も挑んだ事もある、実績も十二分にある。
しかし、ラインハートに関しては対人は初めてだ。少し気負いがあるのかもしれない。
それに勘づいたルーカスが、ガシッと肩を組む。
「お前は俺に任せとけ」
「大丈夫ですよいつも通りやるだけです。」
「お前はなあ、少しくらいこの最強である俺に託しても良いんだぞ」
「信頼はしていますよ、何度も助けられてますし」
「そうかそうか なら心配はいらんな」
ルーカスはラインハートに対しては少し他の3人と話している時より楽しそうに、、いや、嬉しそうにしている。
「ポータルが開きます」
音を立て、ポータルが開く。
開戦の狼煙となるかの様に、大きく、
入る時2人は互いに見合い、前を向き、強く、頷いた。
その時────
「ま、待ちなさああい」
この声は間違いない、クラリスの声だ。
この時間に間に合う様に全力で走って来たのだろう。こんなに息を切らしているクラリスを見た事がなかった。
そして、ハアハアと呼吸を整えながら。
「絶対に帰ってこいよ、これは私じゃない、あいつら2人の願いだ」
「ああ勝って来るぞ俺等2人は絶対に!!」
「心配いりません、これは2人の総意ですから」
少し2人はクラリスの言葉の解釈を間違えている様だが、笑って見送る。
「………………私も連れてけー」
「え?」
ポータルが閉じる。
ポータルから出ると外には3人いた。
「どうしてここに来た、2人しか入れないと言っただろう!」
「良いじゃん、目の前までくらい、ついて行っても」
ルーカスは呆れた顔をしながら下を向いた。
ラインハートもやれやれと表情をし、ポータルに入らないならと同行を許した。
向かう時は歩きで向かっている。
無駄な体力を消費しないと同時に戦闘への集中力を高めるために、なので、クラリスも付いて来たはいいものの全く話さない。これが最後の物語かもしれないと言うのに、
しかし、ここで話しかけると何で言われるかが目に見えているので話す事はなかった。
少し歩いたところで、
「集中のところ悪いんだけど、自分語りしていいから、無視していいからさ」
「無理」
ルーカスは速攻で拒否した。
断る言葉さえ、出来るだけ短くしている。
「私はさ、ここに入るまで、ずっと1人だったの、任務中の時も任務外作業も1人だった。昔から性格のせいで人から避けられていたのは分かってた。でも自分は自分でいたかったから曲げなかった。それでついに私は任務の途中で魔力使用過多で体が動かなくなった。誰も助けてくれなかった。そこで気づいたの、私、利用されてたんだって、でも違った。」
クローシス隊員としては優秀であったクラリスは他の隊員に使わされていたと話した。
言われた通り2人はクラリスの話に聞くそぶりすら見せない。それでもクラリスは続けて話す。
「貴方達が私を助けてくれた、守ってくれた。そして、その任務が終わった後「俺たちとチームを組まないか?って」言ってくれたの、今でも覚えてる、使える奴じゃなくて、私、クラリス・アクロディアを仲間として受け入れてくれた貴方達2人が私は今もずっと好きだった。」
上を見る事で涙を流すまいとしているが少し溢れてしまっている。
「だから、私と約束して、ミュートをぶっ倒して、またポータルに入りませんか」
もう涙を堪えるのをやめたクラリスは歩くのを一度止め、正面を向き、2人に大声で感謝を伝えた。
2人は振り返る事は無かったが、確かに見えた。
ルーカスが小さく首を縦に動かしていたのが、、
ラインハートが腕を少しだけ後ろに差し出し、「任せとけ」と言わんばかりに合図をしたのが、、
それを見たクラリスはもう一度大声で───
「負けるな!絶対に負けるなぁ!」
と叫んだ。
それに対して、2人は振り返り
「「うるせーな!!」」
と言って、後ろを向いた。
しかし、前を向いた2人が小さく、「ありがとよ」と小さく呟いたのをクラリスの耳にはしっかりと届いた。
クラリスはそのまま歩く事やめ、2人の姿が見えなくなるまで、立って見守っていた、、
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