学校に来ていない隣の席の陽キャな美少女を手助けできるのは、人付き合いが苦手なぼっちで陰キャな俺だけな件
滝藤秀一
第1話 人付き合いが苦手でぼっち
学校という集団生活の中で春明は稀有な存在だった。
入学以来、自分からは誰にも話しかけず、休み時間は文庫本を広げ周りにはそれが見えない壁とでも主張しているかのように遠ざける。
お昼になれば1人静かにお弁当を食べる毎日。
そんな日々を春明は自ら望んでいた。人付き合いが苦手と自覚しているし、初対面の人とは緊張してまともに声も出ない、ひとたび関われば相手が自分をどう思っているのかも気になり気を遣う。ならば独りのほうが気楽でいい。
高校入学から2週間が経過し、クラスメイトから忘れ去られるくらい影の薄い存在と化した放課後。
「帰りに駅前のモール寄っていこうよ」
「しゃー、部活行くか」
「ねえ、さっき出された宿題ってさ……」
授業が終わった開放感の空気の中に自分が存在してはいけないと春明はそそくさと教室を後にする。
最短ルートで部室に向かおうとしたが、廊下に立ちふさがるように同じ中学だった運動部の人たちがお喋りしていた。
何か話しかけられたら面倒だと思い、踵を返し遠回りしてお悩み相談部の部室にたどり着くと、
「何か部に所属しなきゃいけないなんて面倒以外のなにものでもない……」
そんな独り言をつぶやいて、中へと入る。
奥に本棚、その前に長机とパイプ椅子が数個あるだけの殺風景な場所。
部員は春明1人。
だから誰にも遠慮や気兼ねをすることもなく、教室にいる時よりもずっとリラックスはできた。
適当に本棚から一冊本を取り、椅子に腰かけて窓の外の景色を眺めていたら、
「おっ、ちゃんと来てるね、関心関心」
うんうんと頷きながら、この部の顧問であり担任でもある佐藤美沙がやってくる。
「……帰宅していいのなら、今すぐに家に帰ります」
「うわっ、つれないなあ、せっかく暇を持て余していると思って来てあげたのに」
「……」
「1人がいいのはわかるけどさ、ちゃーんと人とコミュニケーションは取らないと将来苦労するよ」
「……言いたいことはそれだけですか?」
「いいえ、本題はこれから。君の隣の席の女の子、まだ学校に来てないのは知ってるよね」
「そりゃあ隣ですから。話さなくていいので助かってますが、それが……?」
「なぜ学校に来ないのでしょう?」
「……俺がそんなこと知るわけがないでしょ」
「だよね。そんな君に依頼する。彼女が学校に来られるように手伝ってあげて」
「…………はっ!?」
「ほらここお悩み相談部でしょ。担任の教師としては学校に来ていない生徒のこと気になるし、何とかしてあげたいの」
「それは先生のお仕事でしょ。なんでよりにもよって俺が……」
「顧問になってあげたって貸しがあるでしょ。大丈夫、ちゃんと先生もサポートするから」
胸をどんと叩く佐藤。春明は頭を抱え、
「いやどう考えても大丈夫ではないから……人見知りでボッチの俺は他人に話しかけるのすら苦手なことをよく知ってるでしょうよ」
「ええ、君のことはちゃーんとわかってる。だから大丈夫。私は君を信頼してるから」
「……」
何が大丈夫なのか、どこで信頼関係が生まれたのかも全くわからない。
だが顧問を引き受けてくれた佐藤に、春明は借りというよりも恩があるのは確かで簡単に突っぱねることはできなかった。
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