第23話アンハルト国王side

 

「父上。どうかなさいましたか?」

 

「…………」

 

 呑気なものだ。

 自分がどのような状況にあるのか分かっておらんのか? 怒りを抑え、冷静に尋ねることにする。

 

「お前はこの度の件についてどう思っている?」

 

「……どうと言われましても……」

 

「分からぬのか?」

 

「はい」

 

「……っ!」

 

 無性に腹が立った。自分の置かれている状況を理解していない息子に対してではない。

 王太子として何も期待できない事を再認識させられたからだ。

 それならば、まだマシとも言えるだろう。

 王太子に何かを期待する方が間違っているのだ。

 だが、それでも父親としては思うところがある。

 

「お前は何も感じなかったのか!?」

 

 思わず声を荒げてしまう。

 

「いえ、ですから……その……」

 

「なんだ!」

 

 言い淀む息子の態度を見て苛立ちが増す。

 

「何故、私はこのような場所に居るのでしょうか?」

 

「……何だと?」

 

 一瞬何を言われたのか理解できなかった。

 王太子に再教育を施しながら、私の補佐として政務に携わらせてきたつもりだったのだが、まさか伝わっていなかったとは……。

 

 私は愕然とした。


「お前が無碍にした相手が同盟国の王子だ。その事は先ほど説明しただろう?」

 

「はい。ですが、私には重要な人物とは思えません。同盟国の王子というだけではありませんか。王太子と言う訳ではありません。なのに何故、反省室になどに入れられる必要があるのですか?」

 

「……」

 

 絶句してしまった。

 これほどまでに愚かな子だったとは思いもしなかった。

 

 個人の問題ではない。国の問題なのだ!

 

 我が国と重要な同盟関係にある国なのだぞ!それが分からないのか! 余りにも酷い物言いに、ついカッとなってしまった。

 

「お前という奴は!少しは自分の立場というものを考えたらどうだ!この馬鹿者が!」

 

「え?あ、はい。申し訳ありません」

 

 王太子は素直に謝ってきた。

 だが怒っている理由を理解していない。

 何が悪かったのかが解らないのだ。

 

 何度も説明した。

 それでもこの始末。

 ここまで来れば救いようが無い。

 もはや矯正は不可能だろう。

 

「……っ!」

 

 私は無言で王太子を見つめた。

 

「あの、父上。それで私はいつ出られるのでしょう?」

 

「……そなた次第だ」

 

 絞り出すように言葉を紡ぐ。

 

「そうなんですか。それは困りましたね……」

 

 暢気な事を言う。

 はぁ……本当に頭が痛くなってきた。



 私は執務室に戻ると家臣達に命じた。



「サビオを呼び戻せ!今すぐにだ!!」


 これしか方法がなかった。

 このまま王太子を王にする訳にはいかない。






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