悲しい時に話聞いてもらえるとトゥンクってなっちゃう
「ゆうな、大丈夫?」
水族館という、非日常にうつつを抜かしていたからか、辺りが少し薄暗いからか、
俺は隣で涙をうかべるゆうなのことを気がつくことが出来なかった。
「えっ、?」
ゆうなは少し困惑していたが、頬に流れる涙に気がつくと、手の甲でグイッと涙を拭った。
「ちょっと後で聞いて欲しい話があるんだ」
ゆうなの手は少し震えている。
辛いことでも思い出したのかな、
もしかしたら、水族館にトラウマでもあったのかな、
頭の中で嫌な考えが浮かんでくる。
「ゆうな、水族館好き?」
「急にどうしたの?」
ふふっと笑うゆうなの姿はとても水族館が嫌いというようには見えなかなった。
「じゃあさ、その話聞くまではさ、一緒に魚を見ながら楽しもうよ、楽しい時は楽しまないともったいないでしょ」
そっと、ゆうなの手を握る。
ぽわぽわと暖かく、ゆうなの温もりを感じる。
その手からは優しさが伝わってくる。
ゆうなは少しギュッと強く手を握った後に俺の指と指の間に自分の指を差し込んできた。
いわゆる、恋人繋ぎっていうものだ。
目の前に広がる大きな水槽から漏れる光が俺たちを包む。
ここは海の中。そう感じるほど綺麗だ。
「ねぇ、私。光のことが大好き。」
「俺もだよ」
周りに人がいるから、お互い最低限の声のボリュームだけど、今まで聴いた「好き」と言う言葉の中でも一番大きく聞こえたのは、水族館だからかな。
*
水族館をめいいっぱい楽しんだ私達は水族館にあるカフェに来ていた。
「カフェオレとアイスコーヒーお願いします」
「かしこまりました。他にご注文はありますか?」
「今は大丈夫です。ありがとうございます」
手早くひかりが注文してくれた。私の分まで。
こういうところ流石だなって関心する
「でさ、さっきの続きなんだけどさ」
私はひかりに全て話すことにした。
「実はさ、私昔いじめられていたんだよね」
「え、」
高校の人には一切言わなかったから驚くのも無理はないか。
「で、さっきたまたま思い出しちゃってさ」
「そっか、」
ひかりは軽い相槌を打ちつつ、話の邪魔にならないようにしてくれている。
やっぱ、優しいよね
「で、高校に入った時に人と関わるの嫌だって思うことがあったんだ」
「でもさ、ひなのちゃんいるでしょ?」
ひかりの双子の妹。とっても優しくて私のもう1人の大切な存在。
「ひなのちゃんがさ、分け隔てなく話しかけてくれたおかげでさ、今の私がいるの」
そっか、っと軽く微笑むひかりの表情はどこか誇らしく、それでいてどこか羨まし差を感じさせる。
「それでも、やっぱりまだたまに思い出しちゃうんだよね、さっき泣いてたのもそれが理由」
ここまで話すとひかりは、目の前においてあったコーヒーをずずっと飲んだ。
「辛い話させちゃってごめんな」
コーヒーカップを置いたと同時、頭を深々と下げて謝罪をしてきた。
「そんな、ひかりが謝ることなんてなんにもないよ」
「いや、俺がもっとゆうなを楽しませてればさ。こんなことも思い出すこともなかっただろ?」
「俺は、これからゆうなには俺だけのこと見ていて欲しい。辛い想いなんて俺が吹き飛ばしてやるよ」
ずるいよ。こんな状況で、さっきのこともあるから泣きそうになっちゃうよ。
「俺は、ゆうなの1番になりたい。」
私はもう涙を我慢することは出来なかった。
脇目を振らずいっぱいの涙を流した。
ひかりは私の隣に座って胸を貸してくれた。
ひかりの大きな胸の温かさにもう少し甘えてもいいよね。
***
帰りの電車は朝とは真逆で閑散としていて、夕日の光が差し込みオレンジ色の景色が目の前に広がっていた。
ゆうなは疲れたのか俺の肩に頭を乗っけて眠ってる。
「ゆうながいじめられてた、」
ゆうなの話は俺の心に影を落としていた。
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