好きな子が電車で肩合わせて寝てるの可愛い
日も沈みつつある夕方、部活終わりの学生やスーツ姿の大人が駅に向かって歩いていく。
私達は駅近くの海岸に来ていた。
海の向こうに沈もうとする夕陽を眺めていた。海から香る潮風が鼻をつつき、風が吹き抜けとても気持ちいい。
「橘〜今日楽しかったね〜」
「そうだな〜また来ようぜ〜」
海をスマホで何枚も撮っていた。
それでも私が話しかければ手を止め私の方をしっかり見てくれた。
「なぁ」「ねぇ」
お互い被った。
私は遠慮気味に先言っていい?と聞く。
橘はいーよなんて言って笑ってくれた。
「じゃあ言うわ〜、橘、私あんたのこと好きになったんだよね」
我ながら死ぬほど恥ずかしい
夕陽に照らされてオレンジ色の顔が赤く色付く。
私今どんな顔してるんだろう。橘はなんて思っているんだろう。誰か近くに知り合いがいて聞かれたりしてないだろうか。
そんな何百、何千もの思考が頭を満たす。
時々、身体を突き抜ける風が熱を奪っていく。
それなのに顔は赤いまま、さらに熱くなる。
「そっか、、、そっか〜」
ため息混じりの返事が聞こえて、熱くなった顔から一気に熱が無くなる感覚に襲われる。
もう駄目だ。
手が震え始め、目尻は潤み、声を出したくても出せなかった。
-初恋なんて叶うことはないんだよ、でもそれは失敗や負 けなんかじゃない、成功への第一歩なんだ-
昔読んだ小説でそんなことを言っていたのを思い出した。
もう、逃げ出したい。そう思った。
***
「私あんたのこと好きになったんだよね」
え?これは告白ってことだよね、
嬉しいけど、、嬉しいけど〜先に言われた〜
今日の朝俺はひなのに言われたことを思い出していた。
-いい?お兄ちゃん、今日はあくまで遊ぶだけ、いくらゆうなちゃんが可愛いからって調子に乗って変なことをしたりしちゃダメ男としての魅力がないって思われちゃう-
ひなのは今日の俺の立ち回りを朝の短い時間で教えてくれた。その中でひとつこれだけは絶対ミスるなと言われたセリフ
「告白は先を越されるな、男として死にたくないならな」
俺は今日一日一緒にいて今まで見たことの無いプライベートのゆうなを見ることが出来た。
そして俺は改めてゆうなが好きだと実感した。
ゆうなと一緒にいたいそう思えた。
だからタイミングを見て告白したかったのに、、
「先に告白されたぁ〜」
ゆうなには聞こえない声で囁き、はぁ、と深くため息をついてその場にしゃがみ込んだ。
ゆうなの顔を見ると顔がみるみる青ざめて目が潤んでいる。
「え!?ゆうな!?どうしたの、?」
もしかして体調あんまり良くなかったけどわざわざ来てくれてて、悪化しちゃったとか!?
色々な思考に挟まれ、頭の中がぐちゃぐちゃになるなか
ゆうなは涙を流し、涙ながらぽつりぽつりと話してくれた。
「だって、橘私が好きって言ったらため息ついたじゃん、それって私の事嫌いってことなんでしょ」
あ、やばいやらかした。
自分が原因で異性を、ゆうなを泣かせてしまった。
これはひなのに言われなくてもわかる。俺は最低だと。
この状況を良くすることはもうできないかもしれないけど。
「違う!そーじゃない!ゆうなに先に言われたと思って!」
「それがなんでため息に繋がるの、」
「それは、あれだ、俺双子なのわかるだろ?その双子の妹が告白するならお前がやれって、それが出来ないなら人間として終わりって言われてて!」
「じゃあ何、私の事嫌いじゃないの?」
「嫌いなわけないじゃん!むしろ好きだよ!」
「、、、」
ゆうなはさっきまで真っ青だった顔を絵の具で塗ったかのように真っ赤にしている。
俺は少し考えて、気がついた。
その瞬間俺も顔を真っ赤にして俯く。
お互い顔を合わせられずしばらく沈黙が続く。
「なんで、お互い好きって言ったのに、お互いに好きって気づいた瞬間恥ずかしがってんの」
沈黙を破ったのはゆうなだった。
ゆうなは顔を手でパタパタと扇いでいたが、まだ顔が真っ赤になっていた。漫画とかなら顔の横にかぁーっって文字が置かれてるぐらいだ。
「なんでだろうねw」
あははとお互い笑い前を向く。
さっきまであった夕日はもうすっかり姿を消し、空は真っ黒になっていた。
「なぁ、さっきゆうなは俺のこと好きって言ったよな」
「うん、そうだけど」
漢を見せろ橘ひかり
「じゃあ、付き合ってとは言ってないことでいい?」
「え!?、、うん」
またさらに顔を赤くするゆうな。
ゆうなすまんなもう止まれないわ。
「じゃあ、俺が付き合ってって言っても俺が先に告白したことになるよな?」
「あーー、うん多分?」
「じゃあ今言うわ、ゆうな、俺と付き合ってください」
「いいよ、これからよろしく」
ニコッと笑いゆうなは細く綺麗な手を差し出す。
俺はありがとう、と返しその手に俺の手を合わせる。
ギュッと握られたその手はとても柔らかくて、それでいて骨の硬い感覚もある。
一言で言うなら女の子のやさしい手という感じだ。
「じゃあこのまま駅まで行こ」
そう言ってひをひっぱるゆうなはニコニコと笑い
走り出す。
ビルの光がキラキラと輝いて夜の街を彩る。
これが俺らの始まりの景色。
***
帰りの電車の中、たまたま空いていた席に二人並び座り込む。
お互いに今日撮った写真をLINEで送り合う。
電車の中はあまり人はいなく、少しぐらいなら喋っても迷惑にならないと思ったからゆうなと話していた。
隣駅に着く頃にはお互い疲れが溜まっていたのか会話は自然と無くなっていた。
こんっ
自分の肩に何かが当たった。
なんだろうと思い目を向けると、ゆうながすーすーと眠っている。俺に寄りかかりながら
俺に寄りかかりながら
あまりの衝撃に2回も言ってしまった。
なんか、すごい罪悪感と幸福感が一気に襲って俺はどうすればいいんだろう。
あと出来れば、しばらく2人とも起きないでもらいたい。
俺はゆうなの最寄り駅に着くまで瞑想をして耐え忍んでいた。
**
橘と付き合うことになって、私は浮かれていたのだろう。
何を血迷ったのか私は帰りの電車で橘によりかかって寝る振りをしてしまった。
橘は顔を真っ赤にして窓の外を眺めていた。
『『かわいいな、』』
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