雪の中 365日

@kubiwaneko

第1章 1話 『金木犀の花』

いつも、いつでも。周りを見て、警戒して、安全かどうか吟味して、そして初めてその場所に腰を下ろすことができる。

それを少しでも怠れば、殴られる、蹴られる。

話の通じない、凝り固まった常識を捨て去らない醜悪な大人によって、子供の人生なんて容易く破壊される。

だから、破壊されないために、人を信用してはいけなかった。――信用したやつから、壊れていったから。

だから人とは話さなくなった。だから物事に関心は持てなくなった。


そんな人間が――宮倉真瓜(みやくらまうり)が人間不信に陥るのに、そう時間はいらなかった。


――そして時間は、真瓜が高校生になるまで飛ぶ。



          1



12/25日。その日は一年間いい子にしてたと自称する子どもたちに、深夜に起きた大人がプレゼントを与えるというイベントが起こる日である。


「なんでこんな日に限って食材がきれるかね……」


雪の降る景色を少しも意識に引っ掛けずに、いつもの癖で周りの人間が近づいてこないか警戒をする。

周りの誰かを信用できない。そうなれば、一人暮らしをできる年齢になった瞬間から一人暮らしを始めるに決まっている。

足を滑らせないよう気をつけて、最寄りのスーパーへ。

――機械は信用できる。決められた動きしかしないし、危害を加えてくるわけでもない。

信号が青になったのを確認して、そしてそのまま横断歩道を渡ろうとする。

横から、信用できる機械に乗った信用できない人間が突っ込んできた。

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