14.寝た振り


──睦巳 View


土曜お昼の13時頃、さて駿の家に向かう準備をするかな。


スキンケアして、オシャレして。

今日はずっと室内の予定だから他人の目は余り気にしなくて良い、となれば大胆にイケる。


まず肩紐無しのストラップレスブラにフロントファスナー付きオフショルダー、色は駿の好きな白!

これで肩と鎖骨、そして谷間を強調する。

下は黒のミニスカート、ちょっとフワッとしててワンちゃんチラリズムが有るかも?と思わせる感じ。

と完璧に駿の好みだと思う。下着の色は薄い水色でこれも駿の好み。


さて出掛ける前にお母さんに話しておこう。


「お母さん、今日は晩ご飯要らないから、あともしかしたら泊まるかも」

「えっ!付き合い始めたばっかりなのにもう!?──それにその格好、今までが長かった分その反動なのかしらねえ」

「違うから!まだそういうのじゃないから!」

「はいはい、ちょっとまってね、──念の為にコレ渡しておくから、お互い初めてだと暴走するかも知れないからね、終わった後に飲めば良いから」

「もー違うってば、──まあ、これは貰っとくけど」

「何、期待してるじゃない」

「そうじゃなくて!何かあった時の保険用に貰うだけだから!」

「はいはい」

「はいは1回」

「はーい」


ダメだ、お母さんと話してるとそういう気分になりそうで、本当に期待しちゃいそうになる。


「それじゃいってきまーす」

「頑張ってね」


お母さんは何を頑張らせたいのかな?


◇◆◇


駿の家の前に着いた。

チャイムを鳴らし、駿を待つ、ドキドキ。

あ、フロントファスナーを下げとかないと。

大胆に谷間が大きく、ブラが見えないギリギリの位置まで下げた。

う、露出がありすぎる。やっぱり上げとこう。

ギリギリ谷間が見える位置まで戻した。


駿のお母さんが出迎えてくれて、俺の気合が入りまくってる姿を見て何かを察したようだ。


「ごめんね睦巳ちゃん、まだ駿は帰って来てなくて、部屋に上がって待ってて貰える?」

「え、そうなんですか、……分かりました、駿の部屋で待ってます」

「それにしても睦巳ちゃん、今日は大胆ねえ、おばさん応援するからね!」

「あ、ありがとうございます、でもまだそういう関係じゃないので……」

「うんうん、今日そうなるかもだもんね、頑張って!」


うん、お母さんっていうのはこういうものなんだろうか、まあ俺が気合入れた格好してるから余計にそう見えるんだろうけど。


◇◆◇


駿の部屋に入って、まず匂いを嗅いだ。

だってこれは駿がいると出来ない事だ、今なら堂々とやれる。

男の時なら気にもならなかった駿の匂いが今はとても良い匂いと感じる。

部屋の中心で大きく深呼吸して肺を駿の匂いで一杯にした。普段ならこれでシュンニウムは満タンだ。だが今日はこんなものじゃない。


さて次は、やっぱりベッドだろう。

枕に掛け布団と匂いの宝庫だ。

一番はやはり枕だろうか、抱きかかえ、顔を埋める。

はー、ヤバい、頭がクラクラする、高濃度のシュンニウムだ。

駿の枕と俺の枕を交換したい、駿も俺の匂いがきっと好きなはずだ。


駿が帰ってくるまで駿のベッドで寝る事にした。

ちょっと皺が付きそうなのが気になるけど、衣服を正し、横になって、枕を敷いて、掛け布団を掛けて、んふふ、寝るぞー。


すやあ、と眠れ……るわけがない。

横を向いて匂いで頭がクラクラし、上を向いて掛けぶとんを被って深呼吸をする。

シュンニウムの過剰摂取をどこかで止めないときっと大変な事になる、っていうか、少しなってる気がする。


掛け布団を被るのを止めれば、なんとか眠れそうだ。


目を瞑り、眠る努力をする。


◇◆◇


どれくらい時間が経ったのだろうか、ドアが開いた。

多分駿が帰ってきたんだろう。

俺はというと眠る為にまだ目を瞑っていた。


「ただいまー、って睦のやつ寝てるのか」


寝てる振りをした俺の近くに駿の気配がする。ドキドキ。


「んー、寝てそう……だな、おーい、起きてるかー」


なんか、近くに駿を感じる、すぐ其処にいるような、そんな気配。

俺は寝た振りを続行した。


「マジで寝てるか、結構前に来てたみたいだからな、しょうがないか」


駿は荷物を置いて椅子に座ったのだろうか、そんな音がする。


「まさか睦の誕生日プレゼント買ってたらこんな時間になってるなんてな」


え!?確かに明日は俺の誕生日だけども!え?今日はそれを買ってたから午前中はダメだって言ってたの?

やった、でもそうならそうと言ってくれれば良かったのに~。

嬉しくてニヤけそうになるのを我慢する、今俺は寝ているのだ、我慢我慢。


「しかし、俺の膝枕の前に寝てるなんてな、って、よく見ると肩と鎖骨が丸見えでサービス満点だな」


んふふ、今は掛け布団で隠れているが今日はさらに大胆なんだぞ、後で驚け!


「肩と鎖骨がこんなにセクシーだったなんてさ、睦が見せてくれるまで気付かなかったよ、ありがとな」


そういう感謝のされ方はあんまり嬉しく……いや、嬉しい、俺の虜になれ!


「俺のセミダブルのベッドだと睦は小さく見えるな、これだと一緒に横に寝れそうな感じだ」


俺も小さくなったからな、以前ならともかく、今なら2人並んで眠れそうだ。2人並んで、か、それも良いな。


「──なあ睦、この唇見てるとさ、キスしたくなるんだ、可愛いし綺麗だし柔らかそうだし、艶々してて本当に美味しそうだ、いつも吸い寄せられそうになってるのを我慢してるんだぞ」


え!?えー!?

駿がそんな事を言うとは思わず、動きそうになってしまった。


「ん?あれ?……気のせいか、……寝てる、よな」


駿!お前そんな事思ってたのか!めちゃくちゃ嬉しい!


……これってさ、女を磨いて、駿に頼られたい、支えたい、甘えて欲しい、という思いで行動してた事が実を結んだって事!?

女を磨いた事で駿が俺の唇に魅力を感じて、俺にキスしたいと思う、俺が求めるばかりじゃなくて、俺が出来る形で駿に求められて、駿と対等になる。


だから駿にキスしたいと思われる事はとても嬉しい、応えてやりたい。

駿にもっと求められたい、もっと甘えて欲しい、出来る限り応えたい。


──今日キス出来るきっかけとかあればなあ。


起きてしまいたいけど、今起きたら多分良くない事になると思う。

今の発言は俺が寝ているからこそなんだ。つまり隠しておきたい本音ってやつで。

つまり聞いている事が分かったら、そこまでの関係じゃない俺達だと逆効果になりかねない。


でもそろそろヤバい、起きそうな気配をだそう。このままだと聞いてはいけない事をもっと聞いてしまいそうだ。


「……うーん」


寝返りを駿とは反対にして、と。


「おっと、そろそろ起こすかな、ってもこの肩は触りにくいんだけど、どうするか」


確かに肩を露出してるから触るのを躊躇するか、仕方がない、出来るだけ自然な感じで起きるか。


「ん……あれ?あ、そっか」

「お、睦、起きたか、よく寝てたぞ」

「んー、ふあぁあ、よく寝た、駿、あっち向いててくれ」

「ん?分かった」


身体を起こして、掛け布団を外し、ベッドから降りて服装を整え、ついでにフロントファスナーをブラが見えないギリギリまで下ろした。


「こんなもんかな、良いぞ、こっち見ても」

「おう、って!」


駿が俺を見てゴクリと唾を飲むのが見えた。そうだろうそうだろう、エッチな格好だろ?俺も大分恥ずかしい。


「なんか、……凄い格好だな、ミニスカートにおっぱいの深い谷間と上半分見えてて、肩と鎖骨が丸見えで、めちゃくちゃエッチだ」

「言っとくけど、外でこんな格好しないからな!今日は出掛けないからこういう格好なんだから、そこを勘違いするなよ!」

「ああ、分かってるよ、外で見たら絶対違う感想を持つわこれは」

「ビッチじゃ無いからな!」

「言うなよ!分かってるって」


思ってる事が丸分かりだ、だって俺も思ってたもん。


◇◆◇


「じゃあ、早速膝枕してくれ」

「え?さっきまで寝てたじゃん、また寝るのか?」


「良いんだよ、それそれ、これはこれなんだから」


本当は眠れてないしな。

さあ早よ早よ。


「その前に飲み物取ってくる、睦も寝てたなら水分補給しないとな」

「ああ、ありがとう」


確かに、汗かいたしそうするか。

駿は部屋を出て、階段を降りていった


ベッドに座って一息ついた、まさか駿があんな風に思ってるなんてなあ。

キスしたいとか俺の肩と鎖骨が好きだとか、あと誕生日プレゼント買ってくれてたなんて。

これは知らない振りをしないとな。その時が楽しみだ。


少しして、飲み物とお菓子を持ってきて上がってきた。


「久しぶりに俺の部屋に来たんだからさ、前みたいに2人で少し話しようぜ」

「確かにそうだな、でも駿は俺の隣な」


右隣をポンポンと叩いて呼んだ。


「いやそこベッドの上だからな、それにお菓子食べにくいだろ」

「そうだな、じゃあ、ベッドから降りたこの位置で隣だ」


小さめのテーブルの前に座り、駿を呼んだ。

駿が座ると俺は距離を詰めて、寄りかかろうかと思ったけど、今回は止めた。前みたいに、が注文だったし。


昔のように、と言ってもたった2週間前、なのに随分と昔のように感じる。

雑談なんかをしながら冗談なんかも交えて、2人で話をした。

心なしか駿が最近見たことのない嬉しそうな表情に見えた。


駿にとっては男だった俺との思い出はとても大事なものなんだろう。

俺にとっても大事なものだ、それがあるから今の駿との関係があるんだし。

──でも俺は、これから作る駿との思い出の方が大事に思えた。


「さてそろそろ膝枕してやるかな」

「なんだよ駿、膝枕させて下さいじゃないのか」

「そんな事言うなら止めようかなー」

「あ、嘘です嘘嘘、膝枕して下さい」


「あ、そうだ、本当に寝るつもりなんだよな?

何時間くらい寝るつもりなんだ?」


時計をみるともう15時近い、今からだと3時間くらいで晩ご飯かなあ。


「そうだな、3時間くらいかな」

「3時間か、一つ提案なんだけど」

「いいよ、何?」

「正直3時間も膝枕は俺が辛い、といっても膝枕が辛いというよりその体勢を3時間が辛いという意味ね。

だからさ、膝枕じゃなくて腕枕はどう?俺も横になれるから体勢は大分楽になるし」

「んー、確かに膝枕のあの姿勢で3時間は辛いかもね、うん、良いよ、腕枕ね」


「良し、じゃあ俺が奥で寝るから、タイマー3時間掛けてっと。ほらこっちおいで」


駿はベッドで横になり、俺を手で呼んだ。

その時にやっと気付いた、腕枕って事は駿の直ぐ側、凄く顔が近い位置で寝るって事じゃない?

そしてお互いが向かい合うなんて事になったら……目と鼻の距離!

もしかしなくても大分恥ずかしいかも知れない、眠れるだろうか。

しかし今更やっぱ無しとか言えない、駿の腕枕、それはとても魅力的な事だから!


今駿は仰向けに寝ていて左腕を伸ばしている。

ベッドに四つん這いになって、のそのそと駿の腕まで移動する。


駿の視線が俺の胸元を凝視しているに気付いた。

元々胸元の露出が多かった格好で、四つん這いになった事で俺の大きなおっぱいが更に露出し、少し垂れる事でさらにエロくなっているようだった。

四つん這いで動く度にゆらゆら揺れるおっぱいはさぞエロかっただろうと思う。


「こら、エロ駿、今は見るな!」

「別にいいだろ、俺にサービスする為の格好なんだろ?」

「確かにそうだけど、これは想定外だから……」

「そうなのか、じゃあ今は我慢するか」

「うん、ありがとう」


そのまま仰向けになり、駿の腕を枕にした。

太ももより更に硬い、これ、寝られるのか?


ちらりと駿を見ると駿もこちらを見ていた、そして距離が近い!

すぐに視線を逸し、目を瞑った。


腕枕が動いた、いや筋肉が動いた。

そして駿の左手が俺の頭に軽く置かれた。頭だけ抱き抱えられるような感じだった。


少しだけ顔を動かして目を開け駿を見たら駿も上を向いて目を瞑り、眠ろうとしているようだった。


「睦、俺も寝るから、お休み」

「ああ、うん、おやすみ、駿」


駿に軽く頭を撫でられたまま、膝枕とは違う、すぐそばに全身で体温を感じる安心感で思ったより心地良くなって眠った。



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