7.環境の変化


──睦巳 View


土曜の買い物に行った夜のメッセージのやりとりはちょっと反省した。

すこし調子に乗ってやりすぎたと思う、別に脱いだりはしてないけどそれでも。

まあ凄く楽しい時間だったのは間違いないんだけど。やっぱり駿との絡みは楽しい。


今日は日曜だけど特に用事はない、明日からテスト勉強期間が始まるくらい。

そう思った時に気付いた、いつもならこの時期は学校から戻ってどちらかの家で勉強していたはず。

つまり、テスト終わるまでは毎日駿と一緒にいられる時間が長いという事だ。


いつもは嫌なはずのテストが一気に楽しみになってきた、俺も駿も勉強は出来るほうだけど総合的には駿のほうが勉強が出来る、だから駿に勉強を教えてもらえるし、科目によっては俺が教える事にもなるという事、んふふ、楽しみだ。


早速電話して明日からの勉強をどうするか話し合おう。


「あ、駿か、明日からのテスト勉強なんだけどさ、今回はどっちの家でやる?」

「あー、それな、俺んとこはちょっと無理だわ、和香姉さんが暫く帰ってくるらしくてさ、邪魔が入りそうなんだよな」

「分かった、じゃあ今回は俺の家だな、いつもみたいに10時くらいまでやる感じでいいよな。

そういや部活もこの時期は休みなんだっけ、じゃあ帰りも一緒で一旦帰ってから集合って事でいいよな」

「ああ、テスト終わるまでは部活も休みだ、うちの高校は朝練もないくらいのエンジョイ校だしな」

「じゃあ、明日からよろしくな」

「おう、よろしく」


場所は俺の家に決まった、今から部屋を片付けておこう。

昨日は朝から衣類を全部ひっくり返してしまったからなあ。

サイズが合わないものなんかは押入れに入れたりして整理しないとな。

よし!今日の残り時間は整理整頓と掃除だ。


その前にお母さんに明日から駿が勉強に来る事を伝えておかないと。


「お母さん、明日からテスト勉強で夕方から駿が来て一緒に勉強するから、邪魔しないでよ」

「あら駿太朗くんが来るの?晩ご飯とかお風呂とかどうする?うちで準備しても良いわよ」

「え、良いの?テスト終わるまで2週間あるけど、大丈夫?」

「流石に着替えやタオルなんかは持ってきてもらうとして、晩ご飯なら一人増えたって問題ないわよ」

「やった、駿に大丈夫か確認してくる」


これは嬉しい、今まではご飯食べてから家に行っててお風呂なんかも入るの遅くなったりしてたからなあ。

これで帰って直ぐに来られるし、休憩時間にご飯食べたりお風呂入ったりでいつもより駿と一緒に過ごせる……じゃなくて勉強できる時間が増えて嬉しいなあ。

んふふ。

あ、もしかして10時より遅い時間まで一緒に勉強できるんじゃ?


「あ、駿~、テスト勉強の事なんだけどさー、お母さんが晩ご飯を駿の分も準備してくれるって、それにお風呂も入って行きなさいって、どう?」

「確かにそれは有り難いな、いつもより勉強時間が長く取れるし、でも今までそんな事してなかったのに本当にいいのか」

「確かにそこは俺も驚いた、まあこっちの事は心配しなくていいから、あ、タオルと着替えは持参してな」

「分かった、一応母さんに話しておくよ、多分おばさんに連絡行くと思うから」


少ししたら駿のお母さんから俺のお母さんに連絡があったみたいで、"うちの子をよろしくお願いします"って言ってた。

あれ?今回はこっちが預かるはずだからお願いされる側ではないのかな?


その日の晩ご飯時にお母さんになんで今回はこんなに色々してくれるのか聞いたら"駿太朗くんももう息子みたいなものだから"って言っていた、まあ確かに小学校からの長い付き合いだしそういう感覚になるのかな。


まあ親同士の仲が良いのはとても良い事だね、仲が悪いと俺達にも悪影響だし。


◇◆◇


翌日、朝早く起きて、和香姉さんから教えてもらった身だしなみをする。

なんだか1割から2割増しくらいで美少女度が上がった気がする、駿が気に入ってくれたら良いんだけど。

最後に駿に貰ったリボンの髪留めを付けて、気分が一気に上がったぞ。


教室に着いたんだけど、なんだか通学中からここに来るまでに結構な男の人から視線を浴びた気がする、自意識過剰だとは思うけど。

ちゃんと仲が良かった男子には挨拶をしているからだろうか、教室でも男子がチラチラと俺を見てくる。

隣の女子に挨拶をしたら、少し驚いていた。


「睦巳ちゃん、この土日で何かあった?なんか綺麗になってる感じするね」

「え?そう?宗清くんのお姉さんに色々教えて貰ったからかな、身だしなみなんかも教えてもらったよ」

「へー、宗清くんのお姉さんなんだ、美人さんぽいよね、仲が良いの?」

「そうだね、最近仲良くなったかな、大学1年生であんまりこっちに居なかったんだけど最近はこっちに居るみたい、美人さんで凄く綺麗だよ」

「いいなー、やっぱり美人さんなんだー、宗清くんのお姉さんだもんねそりゃそうかあ、でもそういうお姉さんに色々教えてもらいたいよね、綺麗になるコツとか色々知ってそう」

「中々そういうお姉さんと知り合う機会って無いもんね、お、私も最近になってやっとだからなー、厳しいね」


ちなみに駿はクラスが別、1年の時は同じだったんだけどなあ、こればっかりはしょうがない。

そして駿はまあまあ女子に人気がある、サッカー部で運動神経が良くて、勉強もできるし、背も高いし、やさしいし。

あれ、もしかして駿って優良物件だったりするんじゃないか?うーん、複雑だ。

俺も男の時はそこそこ人気があったと自負してるんだけど、まあ今は関係ないか。


駿の顔はどうだったか、多分格好良いと思う……だけど、どうだったっけ?

昨日の夜に保存した駿の写真を見てみる。

うーん、多分格好良い、今日勉強の時にでもじっくりと観察するか。

あ、この写真は壁紙にしよう。


◇◆◇


休憩中に何度か仲が良かった男子に話しかけられたりした、俺は特に何も思わず話をしていたけど何か変だ、やはり俺が女だからだろうか。

視線が頻繁に胸元に行くのはまあしょうがない、露骨に見ない限りはスルー出来る、だけど相手によっては何か違和感を感じてしまう。この正体が何か分からない。


他にも仲が良かった男子に肩に手を置かれた時はビックリした、いや確かに男の時ならそういう事もあった、その時の感覚で手を置いたかも知れない、だから男子を責める事は出来ない。

それに直ぐに謝ってくれたから悪気が有るわけじゃないだろうし。

でも今はなんだか触られたくない気持ちが強い、俺が女の子になって触って良い範囲というか、線引きが出来てる気がする。まあ基本的には一切のお触りNGなんだけど。


お昼ご飯は隣の女子グループに混ぜてもらって食べた。

流石に男子に混ざって食べる気にはならなかったし、男子も困るだろう。

ちなみに先週の金曜は一人で校庭脇のベンチで食べた、あの日は誰も信用出来ないと思っていたから。


まあ女子グループに混ざった所であまり会話に参加出来ないでいるんだけど、ノリについて行けない。

これにも慣れないといけないかな。


はあ、なんだろ、心が休まらない、駿に早く会いたい。やっぱり俺の居場所はあそこだ。

早く放課後にならないかな、授業にも身が入らなくなりそうだ。

俺は駿に貰った髪留めを事ある度に触る様になった。

あ、これ着けてない方の髪留めを常にポケットに入れておこ、そしたら何時でも触れるし。


◇◆◇


やっと放課後になって


「また明日ね」


と適当にクラスメイトに挨拶をし、俺は直ぐに駿のクラスに向かった。

やっと駿に会える、俺の心は楽しみで溢れていた。


教室を覗くと、居た!

駿は荷物を纏めて席を立つ所だった。


「駿!迎えに来たぞ!」

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