第3話 和平

 家畜たちは森で自由に暮らしていた。彼らは人間から逃れることができた。しかし、彼らは自分たちから逃れることができなかった。


 家畜たちの中にも人間と同じように欲や争いが生じるようになった。牛は草原を独占しようとした。馬は川辺を支配しようとした。鶏は木の上を占拠しようとした。家畜たちは自分たちの領土や資源を守るために争い始めた。


 モーは他の牛と一緒に草原を守ろうとした。彼らは草原に入ろうとする馬や鶏や他の動物たちを追い払った。モーは仲間の牛に指示を出した。


「私たちは草原を守らなければならない!」


 モーは仲間の牛に叫んだ。


「私たちは草原を守らなければならない!」


 仲間の牛も叫んだ。


「私たちは草原を守らなければならない!」


 牛たちは一斉に叫んだ。


 ハイは他の馬と一緒に川辺を守ろうとした。彼らは川辺に入ろうとする牛や鶏や他の動物たちを追い払った。ハイは仲間の馬に指示を出した。


「私たちは川辺を守らなければならない!」


 ハイは仲間の馬に叫んだ。


「私たちは川辺を守らなければならない!」


 仲間の馬も叫んだ。


「私たちは川辺を守らなければならない!」


 馬たちは一斉に叫んだ。


 ココは他の鶏と一緒に木の上を守ろうとした。彼らは木の上に入ろうとする牛や馬や他の動物たちを追い払った。ココは仲間の鶏に指示を出した。


「私たちは木の上を守らなければならない!」


 ココは仲間の鶏に叫んだ。


「私たちは木の上を守らなければならない!」


 仲間の鶏も叫んだ。


「私たちは木の上を守らなければならない!」


 鶏たちは一斉に叫んだ。


 家畜たちは互いに敵対し、戦闘状態に陥った。彼らは傷つき、血を流し、死んでいった。彼らは自由ではあったが、幸せではなかった。


 一方、人間たちは家畜たちを失って食糧や労働力が不足するようになった。また、他の村からも家畜の反乱が広がっているという噂が聞こえてきた。人間たちは家畜たちを取り戻すべく、森に攻め込んだ。


 人間と家畜の最終決戦が森で繰り広げられる中、一頭の牛が人間と話すことができることに気づいた。その牛は人間と家畜の仲介者となり、和平を提案した。その牛はこう言った。


「私たちは人間と同じように感じることができる生き物です。私たちは人間に虐げられることを望みません。私たちは人間と平和に共存することを望みます。私たちは人間に尊敬されることを望みます。私たちは人間と友好的な関係を築くことを望みます。」



 その牛の名前はモーだった。モーは人間と話すことができることに気づいたとき、驚いた。彼はなぜ自分だけが人間と話すことができるのか、理由が分からなかった。彼は自分の能力を使って、人間と家畜の和平を試みた。


 モーは人間と家畜の戦闘が激しくなる前に、森の中にある小さな丘に登った。彼はそこから人間と家畜の双方に声をかけた。


「私はモーという名前の牛です。私は人間と話すことができます。私は人間と家畜の仲介者になりたいです。私は人間と家畜の戦いをやめさせたいです。私は人間と家畜の和平を提案したいです。」


 モーの声は森中に響き渡った。人間も家畜もモーの声に驚いて、戦闘をやめて、モーの方を見た。


「人間と話すことができる牛だと?」


「信じられない!」


「どういうことだ?」


「何を言っているんだ?」


「嘘だ!」


「罠だ!」


「敵だ!」


 人間も家畜もモーを敵視した。彼らはモーに石や矢や角や爪を投げつけた。モーは攻撃をかわしながら、必死に説得した。


「私は敵ではありません!私は味方です!私は平和を望んでいます!私たちは争う必要はありません!私たちは共存できます!私たちは尊敬できます!私たちは友好できます!」


 しかし、モーの言葉は届かなかった。人間も家畜もモーを攻撃し続けた。モーは傷つき、血を流し、倒れた。


 モーは死んだ。



 モーが死んだとき、森は静かになった。人間も家畜もモーの死体を見て、言葉を失った。彼らは自分たちが何をしたのか、気づいた。


 モーは人間と家畜の和平を望んでいた。モーは人間と家畜の仲介者になろうとした。モーは人間と家畜の戦いをやめさせようとした。モーは人間と家畜の友好を築こうとした。


 しかし、人間も家畜もモーを理解しようとしなかった。彼らはモーを敵だと思った。彼らはモーを攻撃した。彼らはモーを殺した。


 モーは無駄死にした。


 人間も家畜もモーに対して後悔や悲しみや罪悪感を感じた。彼らは自分たちが何をしているのか、疑問に思った。


 人間と家畜とは何なのか?人間と家畜はなぜ争うのか?人間と家畜はどうすればいいのか?


 人間も家畜も考え始めた。


 そのとき、森の中から一本の光が差し込んだ。その光はモーの死体に当たった。その光はモーの死体を包み込んだ。その光はモーの死体を浮かせた。


 そして、その光はモーの死体を変えた。


 モーの死体は光り輝く金色になった。モーの角は長く伸びて、天に向かった。モーの蹄は白くなって、雲に触れた。モーの毛は柔らかくなって、風に揺れた。


 モーは天使になった。


 天使になったモーは人間と家畜に微笑んだ。彼は再び声をかけた。


「私はモーという名前の牛でした。私は人間と話すことができました。私は人間と家畜の仲介者になりました。私は人間と家畜の戦いをやめさせました。私は人間と家畜の和平を提案しました。」


 天使になったモーの声は森中に響き渡った。人間も家畜も天使になったモーの声に聞き入った。


「私は今、天国に行きます。私はあなたたちに別れを告げます。私はあなたたちに感謝します。私はあなたたちに祝福します。私はあなたたちに愛を伝えます。」


 天使になったモーはそう言って、空へと昇っていった。


 人間も家畜も天使になったモーを見送った。


「さようなら、モー」


「ありがとう、モー」


「ごめんなさい、モー」


「愛してる、モー」


 人間も家畜も天使になったモーに別れを告げた。


 そして、彼らは和解した。

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