第64話 送り込まれた助っ人?



「かかれぇ!」


先に動いたのは盗賊たちだ。

お頭らしき男が、号令を掛けると一斉に襲いかかってく。

しかし、その足はすぐに止まる。


メイドのベルとケイが、刀を抜いて襲いかかってきた盗賊二人を上下真っ二つにしたのだ。

その行動に、恐怖したのか盗賊たちが止まったのだ。


「何してる! 数で押せ!」

「へ、ヘイ!」

「行くぞ!」


お頭の合図で、ケイとベルにそれぞれ三人がかりで襲いかかる。

しかし、ベルもケイも動じることなく、襲い掛かってきた盗賊三人を斬り捨てた。

これには、さすがに盗賊たちも動けなくなる。


当のお頭と呼ばれた男も、二の足を踏んでいた。


「う、うげぇ~」

「! お嬢様?!」


そこへ、我慢ができなかったのか、紗香が吐いてしまった。

それを機に、さくらも菜月もひよりも吐いてしまう。


「今だ、逃げるぞ!」

「へい!」


そう言って、盗賊たちは逃げていった。

追いかけて、止めを刺したかったがこの状況ではしょうがない。

俺はすぐに、盗賊の死体をアイテムボックスに収納すると、持っていた銃もホルスターに収納した。


「ユウタさん、その盗賊の死体はどうするんですか?」

「いや、さくらたちの目にはいらないようにしただけだよ。

あの様子だと、人が殺されるところって初めて見たんだろ?」

「まあ、魔物は何度もあるんですが……」


とりあえず、さくらたちが落ち着いてから神殿に移動しよう。

後、この場から少し離れたほうがいいかもな。

死体はないが、血だまりはあるからな。


あまり見たくないだろうし……。



それから三十分ほど休憩すると、みんな落ち着いてきたようだ。

メイドとも、少し話せるようになっているみたいだし……。


「あ~、そろそろ移動したいんだが、いいだろうか?」

「は、はい、大丈夫です」

「私も、大丈夫よ」

「何とか、大丈夫」

「それじゃあ、神殿に移動するぞ」

「はい」


座っていた者たちは立ちあがり、俺を先頭に神殿に向けて歩き出した。

盗賊に襲われる前に、すでに見えていた神殿がどんどん近づいてくる。


この神殿は、俺たち異世界人にとっては最初の場所。

この神殿内には、先輩たちが残した情報が貼り紙としてある。

今回は、それをもう一度確認する。


そして俺は、追加で派遣された人を迎えに来たのだが、誰が派遣されたんだろうな。

こういう体力的なことをいえば、最上だし、頭を使うなら井口か。


そんなことを考えながら歩いていれば、目的地にはすぐに到着する。


「着いた~」

「……改めてみると、神殿って大きいよな~」

「ね~。それに、彫刻とか結構細かいんだよね」

「はいはい、中に入ったら、すぐに貼り紙とか確認すること。

今の自分にとって、必要な情報があったらよく読んでおけよ」

「「「は~い」」」


俺たちは、すぐに神殿の中へと足を踏み入れた。

すると、神殿の中から声が聞こえた。


「先輩!!」

「ん?」

「森島先輩!?」


そう言いながら、一人の女性が俺に抱き着いてきた。

突然のことで、驚いて固まってしまったが聞いたことのある声に正気に戻る。


「先輩! ご無事でしたか!?」

「……熊野か?」

「はい!」

「お~、久しぶりだな、熊野。

ん、ということは、送られてくる人って熊野のことなのか?」

「はい、そうです!

熊野絵美、調査員の応援としてきました。

よろしくお願いします!」

「あ、ああ、人手があるのは助かるよ」


追加できたのが、熊野絵美とはな。

この熊野とは、探偵事務所の調査員として、何度も仕事を一緒にしたことがある女性だ。

同い年にもかかわらず、俺の方が二年ほど先に探偵事務所に入ったから先輩呼ばわりされている。


いい加減直してくれと、言ってあるんだが直らないんだよな……。


「あ、あの、ユウタさん。彼女はいったい?」

「ん、ああ、紹介がまだだったな。

彼女は熊野絵美。俺の仕事での同僚で、二年後輩にあたる女性だ」


蚊帳の外だった直人が、みんなを代表して聞いてきた。

そういえば、紹介がまだだったな。


「熊野絵美です。

みなさんは、神隠し事件の被害者でいらっしゃいますね?

詳細は、上司から聞いています。

今回は、先輩の力になるように応援できました。よろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします……」

「……熊野さんて、ユウタさんの恋人とか?」

「へ?」


さくらが、何やらおかしな質問をしてきた。

そのため、熊野が固まってしまう。


「おいおい、熊野とは同僚、仕事仲間だよ。

それに、俺に恋人ができたことなんてないよ」

「そ、そうなんですか?」

「あ、ああ」

「所長とは、何でもないんですか?

あんなに仲が良いのに……」

「朱美とは、仲が良いだけだよ。

前の所長の奈々子さんには、結構お世話になっているからな。

それで、娘の朱美と仲が良いだけの話だ。特別にどうこうということはないぞ」

「そうなんですね~」


なぜか熊野の機嫌が良くなった。

どうやら、何かしらの勘違いしていたようだな。


「それにしても、熊野を送ってくるとは人がいなかったのか?」

「私が志願しました!

それに、先輩からの報告はかなり世間を騒がせてましたよ。

異世界だの、魔法だの、どこの異世界物の漫画なんだ、と」

「現実の話なんだがな……」

「ああ、それと神隠しになった人が増えたのも、先輩のせいかもしれませんね」

「は? 神隠しが増えた?」

「はい、増えました」

「なぜ!?」

「それだけ、現在が生きにくいってことなんだと思います。

みんな、逃げだしたくなっているんですよ」

「それで異世界? ばかばかしい、こっちも大変だっていうのに……」


こっちの世界の方がいいなんて、さくらたちを見てそう言える人はいないだろう。

奴隷制度があるんだぞ?

盗賊や魔物が、そこら辺に普通にいる世界だぞ?


こっちに来て、後悔している者がどれだけいるか考えると、頭が痛い……。






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