第62話 報告を



「その報告書に、今回新たに発見された日本人の名前と詳細を書いておいた。

それと、こっちでの問題も書いておいたからよく読んでおいてくれ」

「分かったけど、どうしてこんなに急ぐの?」

「この扉で、こっちとそっちを繋げると、俺の魔力がすごい勢いで消費されるんだよ。

ゲームで言うところのMPを大量に消費し続けるってことだ。

MPには限りがあるから急いでいるんだ」

「分かったわ。

ああ、それと、そっちに追加の人を送るって言ったわよね?

その人選が終わったから、明日のお昼ごろまでに迎えに行ってもらえる?」

「了解、明日のお昼までにだな?」

「ええ、お願いね」


そう言って、扉を閉めた。

さすが、俺の上司。俺の説明で、要件をすぐに伝えてくるとは……。


「あの、今のは誰です?」

「俺の職場の上司だ。

今回発見した君たち、君たちの話に出てきた人たちに、大体の行動をそえて報告しておいた。

次の報告の際には、映像を送れないかとか手段を考えてくれるだろう」

「……どうして、どうして帰れないのよ」


直人の質問に答えていると、座り込んだままの菜月たちが泣きながら俺に訴える。


「どうして、少ししか開かないんですか?!」

「俺のレベルが低いからだな。すまない……」

「もっと、レベルを上げる努力をしてくださいよ!」

「菜月! ひより! それ以上はダメだよ……」

「う、ううう~~」


さくらが、二人を止める。

みんな俺を責めても、どうにもならないことが分かっているから。

すべては、これからどうするか……。


「とりあえず、帰る手段があることは分かった。

なら、私たちがすることはただ一つ!」

「それは? 優香」

「生き延びること!

この異世界で、生き延びて帰れる日を迎えることだよ、紗香!」


そう、俺たちができることは、帰れるその時まで生きていること。

レベルを上げて、強くなれば死に難くなる。

そうなれば、生き延びることもたやすいだろう……。



俺はステータスを呼び出し、残りの魔力を確認する。

すると、今回もかなりもっていかれていたが、前回ほどではない。


「どうだい主、魔力残量は」

「前回ほどではないが、やっぱり結構消費するな」

「それだけ、異世界間を繋げることは大変なんだろうな……」


俺は、直人たちを見渡す。


「さて、これからダンジョンへ向かうつもりだったがやることができた」

「やること、ですか?」

「ああ、まずは神殿に戻るぞ」

「神殿って、私たちが最初に来た場所ですか?」

「そうだ。そこで、壁に貼っている貼り紙をもう一度確認する。

あの貼り紙は、結構重要なことが書かれているようだからな」

「……そうですね。

見逃した俺たちは、あの神殿に戻って確認した方がいいかもしれないですね」

「……あの貼り紙って、この世界に来た先輩からのメッセージだったってことですか?」

「そういうことだな」


死んでほしくなくて、必死になって調べたことをこれからこの世界に来てしまうだろう人たちに向けたメッセージ。

それをもう一度読んで、生き残るための知識としたい。



「そういえば、こっちに来る人がいるとか言ってましたね」

「たぶん、同じ探偵事務所からの応援ってことだろう。

誰が来るかは分からないが、迎えに行かないとな」

「それじゃあ、貼り紙の確認はそのついでですか?」

「ついでじゃないぞ。

神殿の貼り紙の確認は、考えていたからな。

それに、神殿近くにもダンジョンがあるらしい」

「え? それ、本当ですか?!」

「ああ、神殿の貼り紙の中にあるダンジョンの記述に、そう載っているぞ」

「そんなことまで……」

「だから、どのみちあの神殿には行かなくてはいけなかったんだ」


さくらたちを立たせると、扉紹介屋から出るように促す。


「それじゃあ、病院の待合室に戻るぞ~。

これからのやることは、決まったんだしな」

「決まったって?」

「いいか紗香、俺たちは明日、最初の神殿に戻る。

そこで俺は、仲間と合流する。

君たちは、神殿の貼り紙を再確認すること」

「再確認……」

「それじゃあ、戻った戻った。

ガンゼス、また何かあったら利用させてもらうよ」

「ああ、待ってるよ主殿」


そう挨拶を交わして、全員で扉を出た。

そして、扉が閉まると床の魔法陣へと消えていき、同じように魔法陣も消える。


待合室のソファに、ガックリと座り込む菜月とひより。

疲れたように座るのは、さくらと紗香だ。

考え込むように座ったのは、優香と直人。


「お、帰ってきたようだな」

「ホーリー、何かあったのか?」


すると、ホーリーの後ろから、女の子が三人現れた。

確か、アシュリーとシドニーとベラだったか?

どことなく恥ずかしそうに、もじもじとしている。


「治療が完了した。

もう、彼女たちは大丈夫だ」

「おお、ありがとうホーリー。

それと、アシュリーとシドニー、それにベラ、だよね?」

「は、はい! ご主人様」

「あ、ありがとうござい、ました……」

「治してくれて、本当に、ありがとうございます……」

「元気になってよかった。

これから、他のみんなと一緒にここで働いてもらうけど、大丈夫かな?」

「はい! 大丈夫です」

「よろしくお願いします!」

「します!」


三人、それぞれで一礼する。

これで、ここの人手不足も解消されるだろう。

そうなれば、治療するときにかなり役に立つ。


これから、傷ついた日本人を発見するかもしれないし、もしかしたら、病気で倒れた日本人を発見するかもしれないからな。






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