第34話 盗賊の正体



村の入り口にある、乗合馬車の停留所へ行くと、もうすぐ出発するところだった。

すぐに料金を払って、馬車に乗りこむ。


馬車の荷台を改造して、人が乗れるようにしただけのものだが結構お客さんが乗っていたようだ。

俺が乗り込むと、荷物を置いていたおじさんが席を開けてくれた。


「ありがとうございます」

「いえいえ」


人当たりの良いおじさんだ、どこかの商人さんかな?


「もうすぐ出発するよ~」


停留所にいる職員が、大声で知らせている。

その知らせを何度か聞くと、ようやく乗合馬車は出発した。



俺の乗っている乗合馬車の前に、護衛のための冒険者を乗せた馬車が先行する。

これで、何かあっても安全らしい。


「お兄さんは、冒険者なんです?」

「あ、はい、冒険者です」

「それじゃあ、村には護衛か何かで?」

「荷運びの依頼を受けてきました」

「ほう、では、アイテムボックスか無限鞄持ちで?」

「アイテムボックスですね」

「ほほう、羨ましいですな~」

「商人さんは、持っていないのですか?」

「ああ、私、セネロと言います。

コルバナの町で、セネロ商会といって店を出しています」

「俺は、ユウタと言います。

鉄ランクの新人冒険者です」

「なるほど、新人冒険者でしたか……」


セネロさんは、俺を下から上へじっくりと見て品定めをする。

将来があるかどうかを見て、お近づきになっていた方がいいかどうかを見ている、てところか?


「アイテムボックスって、覚えられないんですか?」

「いえ、魔法屋に行けば普通に売っていますよ。

ただ、高いんですよね~。

まあ、無限鞄の方も高いですが、アイテムボックスよりは安いですね」

「へぇ~」


どうやら、アイテムボックスって珍しいものじゃないようだ。

てことは、容量で差ができているのか?


「その売っているアイテムボックスって、どれぐらい入るものなんですか?」

「そうですね~、入る容量によって値段が変わりますが、大体馬車一台分から三台分が売れ筋ですかね。

特に商人にとっては、ぜひとも欲しいスキルですからね~」

「なるほど……」


ということは、俺に与えられている無限に収納できるアイテムボックスって、とんでもない価値があるものでは?

……これは、あまり知られない方がよさそうだ。


『早馬車が通るため、一旦停止します~』


セネロさんから、いろいろ情報収集をしていると御者の男が大声で知らせてくれる。

その早馬車って、キャニーさんが言っていた調査隊を乗せた馬車なんだろうか?


乗合馬車の横を、足早に通っていく早馬車を見ながらそう考えた。


『では、出発します~』


前の護衛の馬車が動き出し、それに続いて乗合馬車も動き出した。

盗賊のアジト、見つかるといいね……。

そんなことを願いながら、ゴトゴトと揺れる乗合馬車の中でセロスさんと話しながら町を目指した……。




▽    ▽    ▽




途中、休憩を何度か挟みながら、乗合馬車は何事もなくコルバナの町へ到着した。

町の門を抜け、少し入った所にある停留所で止まり、俺たちお客は降ろされる。


俺は、降りてすぐに伸びをして、深呼吸する。


「ハァ~」

「ではユウタさん、今度私どもの店にも寄ってください」

「はい、ありがとうございます。

ぜひとも、時間のある時に寄らせてもらいますよ、セネロさん」


そう挨拶をして、セネロさんと別れた。


「さて、夕方まで時間もまだあるし、ギルドに寄っていくかないと。

俺、村のギルドで、報酬を受け取るの忘れていたんだよな……」


そう呟くと、冒険者ギルドへ向けて歩き出した。


途中、屋台で売っている食べ物のいい匂いが漂ってくるが、お金がない今は寄ることができない。

そう戒めながら、ギルドへ向かった。



冒険者ギルドはに到着すると、すぐにギルドの中に入った。

そして、真っ先に受付へといき、依頼書とギルドカードをカウンターの上に置く。


「お願いします」

「はい、え~と、依頼達成ですね。

おめでとうございます。

……ただ、村のギルドで受け取らなかったんですか?」

「それが、盗賊のアジトを見つけるとか何とかで……」

「ああ、キャニーさんたちが向かった村ですね。

もしかして、あの馬車に同行していたのですか?」

「はい、荷運びとしてですが……」

「ということは、もしかして、盗賊の死体を持っていますよね?」

「……そういえば、出してギルドで処分してもらうと言ってた気がします」

「! すぐにこちらに来てもらえますか?」

「あ、はい」


受付嬢が立ち上がり、俺をカウンターの奥へ案内してくれた。

そして、かなり広い場所に連れてこられた。


「ここで、少しの間お待ちください。

確認のために、人を呼んできますので」

「は、はい……」


俺の返事を聞かないで、急いで受付嬢は走って行った。

もしかして、盗賊の中に賞金首でもいたのかな?

それとも、大変な奴がいたとか?


「こちらです」

「こっちか!」


受付嬢が走って行った通路から、複数の人の声が聞こえた。

そして、四人の男の人を連れて戻ってきた。


「では、ユウタさん。ここに、盗賊の死体を出していただけますか?

後、一体一体並べていただけると助かります」

「分かりました」


受付嬢にお願いされ、俺はアイテムボックスから、一体一体並べて出していく。

すると、何体か出したところで男の人たちが騒ぎ出した。


「おいおい、こいつはゴルバンじゃないか」

「ああ、確かにゴルバンだ」

「こいつ、盗賊と通じてやがったのか」

「おい、こっちはブレンゲルだ」

「ブレンゲルっていえば、弓使いの義賊じゃなかったか?」

「いや、あいつは義賊を装っていただけの盗賊だ。

義賊を名乗って仲間を集めて、貴族から金をせしめたって話だ」

「その仲間を裏切って、逃走したんだったか」

「ああ、こんなやつまで混ざっているとはな……」


何だか、とんでもない経歴が出てきたな。

これは、盗賊のアジトには何かあるのかもしれないな……。






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