第8話 別れと冒険者ギルド



「それじゃあ、三日以内にどこかのギルドに登録して身分証を作ってくれよ?

あんたらは、手配者などの反応はなかったから通行を許可するんだからな」

「はい、ありがとうございます」

「ありがとうございました」

「コルバナの町にようこそ。お二人さん」

「「はい」」


コルバナの町に入る際に、門番をしている兵士の人に止められ身分証の提示を求められた。

だが、俺たちはこの世界に来たばかり。

身分証を持ってないことを教えると、門の側にある詰所から水晶玉のような物を持ってきた。

そして、これに手を置いてくれとのこと。


どうやら、ラノベなどでよくある賞罰調査の魔道具だろう。

兵士の人の話では、手配者かどうか調べると言っていたが……。



無事、俺たち二人は門を抜けてコルバナの町に入れた。


「今は、この木の板が身分証の代わりなんですね……」

「兵士の人の話では、三日以内と言っていましたね。

それまでに、ギルドで登録する必要がありますね」

「私は、自分の職種にあった錬金ギルドへ行きます」

「では俺は、冒険者ギルドで登録しますよ」

「……ここで、お別れなんですね?」

「いえ、錬金ギルドまでは送りますよ?」

「あ、ありがとうございます」


少しうれしそうな川崎さんと一緒に、まずは錬金ギルドを目指した。


ただ俺たちは、この町は初めてだから、どこに何があるのか分からない。

そこで、その辺で屋台をしている人に聞いてみる。


「すみません、ちょっと聞きたいんですが」

「いらっしゃい!」

「いえ、客じゃないんです。

ちょっと道を聞きたいだけなんですが……」

「なんだ、客じゃないのか。

で、何を聞きたいんだ?」

「錬金ギルドへの道を聞きたいんですが……」

「錬金ギルドなら、この道をまっすぐ行けば見えてくるよ。

看板も出てるしさ。

近くに冒険者ギルドや商人ギルドがあるから、すぐに分かるはずだよ」

「ありがとうございます」

「次は、買いに来てくれよな!」

「はい、分かりました!」


親切な屋台のおじさんだった。

こういう店は、必ずお金ができたら買いに来ようと思うな。

売っている串焼きも、美味しそうな匂いさせていたし……。


「川崎さん、ここをまっすぐ行けば見えてくるそうですよ」

「そうですか、ありがとうございます」

「では、行きましょう」

「はい」


俺たちは、来た道をまっすぐ歩いて進んで行く。

時刻は、昼を少し過ぎたあたりだから、人通りもかなり多い。


「川崎さん、手を繋いでもいいですか?」

「え?」

「人が多いですから、はぐれると大変ですし……」

「あ、ああ、そ、そうですね」


そう、戸惑いともとれる返事をすると、俺の手を握ってくれた。

二人手を繋いで、人通りの多い中を進んで行く。




それから少し歩いたところで、錬金ギルドの看板が出ている建物に到着した。

絵で表した看板と、字で書いてある看板だ。


「ここが、錬金ギルドのようですね」

「はい……」


そう返事をして、中へ入ろうとゆっくり歩きだす川崎さん。

繋いでいた手が離れ、川崎さんの背中を見送ろうとした時、錬金ギルドから一人の女性が出てきた。

ぶつかりそうになる川崎さんは、避けようとする。


「あ、すみません」

「……もしかして、川崎梓、か?」

「え?」

「やっぱり! 川崎じゃないか!」

「……近藤先輩?! 

……よかった、生きて、生きていたんですね……」

「当たり前だ! 私が死ぬわけがないだろ?

それに、神隠し事件に関しては一応の答えが出たからな」

「では、これからは……」

この世界にいる日本人を探し出して、日本に帰る方法を探している」

「帰る方法があるんですか?」

「それは分からん。

だが、私はあると考えている。

だから今は、私の職種である錬金術士を極めてやろうと思ってな」

「わ、私の職種も錬金術士なんです!」

「なら、一緒に極めて日本に帰る方法を探そうか!」

「は、はい!」

「ならば川崎、いや梓、ギルドに登録はしてあるのか?」

「これから登録する予定です」

「ならば、ついて来い!

登録した後、私のチームで一緒に頑張ろう!」

「はい!!」


今までのしおらしさはどこかに吹っ飛んだようで、知り合いの近藤先輩という女性にあったことで元気にギルドの中へ入っていった。

……とりあえず、川崎さんに続いて二人目の日本人を発見した。


……発見したのだが、何だろう、この感覚は。

何だか納得いかない感じだが、俺も身分証を作るために冒険者ギルドへ歩いていった。



冒険者ギルドは、錬金ギルドの二軒隣の建物だった。

錬金ギルドの建物よりも、大きくて三階建てになっている。

さらに、人が頻繁に出入りしているようで、今も冒険者というような恰好をした人が入っていった。


俺は、少し緊張しながら冒険者ギルドの中へ入っていった……。



冒険者ギルドの中は騒がしかった。

それは、冒険者たちが結構いたからだ。

左の方に併設されている、飲食店からの人の声が一番大きかったが気にせず受付カウンターへ向かう。


カウンターに向かう際に、右方向に巨大な掲示板が見えた。

そこには、いろいろな依頼の紙が貼り出してあり、その前では冒険者が数人、どの依頼を受けるか話し合っているようだ。


まさに、これぞ冒険者ギルドだろう。

俺は、少し感動しながらカウンターの受付嬢に話しかけた。


「すみません」

「はい、コルバナ支部の冒険者ギルドへようこそ!

ご依頼ですか? それとも報告ですか?」

「冒険者登録をしたいのですが……」

「では、こちらの紙に必要事項をご記入ください」

「はい」


受付嬢が、カウンターの下から一枚の紙を出した。

これに、必要事項を書いて出せばいいらしい。


名前、年齢、職種、得意スキルを書いて出すようだな。

名前は、森島裕太。

年齢は、25歳。

職種は、召喚士。

得意スキル、得意スキルか……。

要するに、どんなことができますか? ということだろう。


ここは、扉召喚は内緒にして、アイテムボックスのこと書いておく。

一応明かせるスキルだけは、明かしておかないとな。


「これで、お願いします」

「はい、えっと……。

はい、大丈夫です。

では、こちらのギルドカードに魔力を流してください。

……はい、これでそのカードは森島さんのカードとなりました。

大切に保管してください。

無くすと、銀貨三枚かかりますからね」


その後は、良くある冒険者ギルドのランクの話やギルドに併設している施設の話、資料室に依頼を受ける時の注意事項などをざっくりと説明され、一冊の冊子を渡される。


「詳しいことは、こちらに書かれてありますので、後でじっくり読んでください。

では、森島様。ようこそ冒険者ギルドへ」


こうして俺は、冒険者の道を歩むこととなった……。






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