【ep.07】魔法が使えるようになるの!?

 不老不死の魔女は魔女の中でも希少な存在で、遺伝により不老不死として誕生する。その家系は数百年後には途絶えてしまうと予測が出来る位にとても少ないらしい。


 リュシーはそんな不老不死の魔女の一族で、200年以上生きているのだと説明してくれた。


 ノアは人間で、ノアが幼い頃にリュシーが拾ってそれから一緒に過ごしているみたい。

 

 2人は少し前から各地にある強力な装備品を探す旅を始めた。以前見つけた指輪をノアがこの家に置いて行ったので、リュシーは私たちが住む前に取りに来た。ノアの所へ戻って装備品を渡すとノアは大事そうに鞄にしまったので、リュシーが怒ってノアを置いて来た……と言うのが現在までの話。

 リュシーは高度な魔法も使えて高速移動が出来たけど、ノアは人間だからここまで来るのに時間がかかったみたい。どれだけ遠くにいたんだろう。


「ノアも来たし、あたしは出てくけど……エマ、あんたに魔法が使えるか試したい事があるの」

「わ、私、魔法を使えるようになるの!?」

「それを確かめに行くの。危険な事も多いわ。平穏な日々を望むならここに住みなさい。ここには結界が張ってあるからモンスターに襲われる事もない」


 リュシーはそう言ってソファを立った。向かいに座る私を見つめて来たので、私は強く見つめ返した。

 私の顔を見て面白そうな笑みを見せた後、ドアに向かって歩いて行く。その半歩後ろについて行くノアの姿をぼんやりと眺めていた。


「なにをのんびりしているの? 行くんでしょ?」

「あ、うん!」


 私は慌ててソファを立ち上がる。隣で立ち上がったばかりのマリアを見て、少し緊張しながら視線を合わせる。

 

「マリア……きみの事は守るよ」

「……はい。エマとなら怖くはありませんわ」

「ふふっ、行こうマリア」


 マリアに手を差し出せばすぐに手を握ってくれて、私は騎士ナイトとしてマリアを引っ張っていく。

 ドアの前で待っていたリュシーとノアは私たちが来たのを確認するとドアの外へ出る。私は大きく1歩踏み出して広がる草原を見渡した。

 

 これから私たちは旅に出るのだと思うと緊張してしまう。前の旅では役に立たなかったけど、今回は何があってもみんなの力になる。

 強い視線を前に向けていると、視線の先にいるリュシーが地図を眺めながら振り向いた。


「目的地まで結構かかるわ。だからまずはあんたたちの武器と防具を揃えに街に寄りましょ」


 リュシーの言葉に私とマリアは不安になる。私は旅の経験があるけどマリアはずっとお城で過ごしてきた。だけどこれからは最低限自分を守れる強さが必要になる。

 不安になってマリアを見ると、私の視線に気づいたのかマリアは私に向かって笑顔を見せる。


「安心してくださいな。護衛術は教わっていましたし、少しは武器も扱えますの」

「そうなんだね……! でも強いモンスターが出たら私が倒すよ!」


 胸を張って宣言する私にマリアは嬉しそうに笑い声を漏らす

 私はマリアの笑顔も守りたい。ううん、絶対に守ってみせる。

 マリアを幸せにしてみせる。


 もう一度強い眼差しを前に向けて、私たちは歩き出した。

 

 *


 歩いて半日ほどの距離にあった街で私たちは武器と防具を揃えると、宿屋に向かった。

 私は長剣を、マリアは槍を選んで、防具や装備品もリュシーに選んでもらって旅の準備は万端だ。

 

 明日からは本格的な旅が始まる。

 

 リュシーは私に魔法が使えるかを調べに行くと言っていたけど、私の能力を調べるには地属性のダンジョンへ行く必要があると説明してくれた。

 ダンジョンは何回か行った事があるけど、片手で数えられる位だから不安もある。だけど私は武器を手に入れた。早く使いこなしたいと壁に立てかけてある私の長剣を眺めながら、眠りにつく。



 翌日の朝、私たちは街を出た。

 歩いて行くと数日かかる場所に目的のダンジョンがある。力を付ける必要もあるとリュシーが言うので、草原を歩いて野営をしながら向かう事にした。

 

 マリアにとって旅をするのは初めてだから、私はマリアの隣を離れずに、様子を見ながら進んで行く。

 

 草原にはモンスターが生息している。だからこうして目の前に現れるのも不思議じゃない。

 咄嗟にマリアを守る様に前に出ると、ノアが私の前で弓を構え始める。

 

「……エマ、マリア、後ろに下がっていてくれるかい」

「……うん」

「大丈夫よ、この子は強いもの。それに、あたしがあんたたちを守るわ」


 そう言ってリュシーはノアの少し後ろに立つと足元に魔法陣が浮かんだ。その後魔法陣から光が飛び出してモンスターに向かって飛んでいく。

 ノアも同時に弓を放つと、すぐに走って攻撃を食らったモンスターに短剣を振りかざしていった。


「あら、あたしの出番はないかし……――」

「リュシー!」


 遠くから1匹のモンスターがリュシーを襲う。かわしきれずに頬を切ってしまい、慌てて魔法を放ってそのモンスターを退治する。

 私とマリアは慌ててリュシーに駆け寄った。


「リュシー大丈夫?!」

「平気よ。あんたたちも平気そうね……、あ……」

「リュシー……?」


 リュシーはモンスターと戦うノアに視線を向けて、ノアがリュシーを捉えているのを確認して目を見開いていた。

 

「走って!!」

「え!?」

「いいから! ここにいると危険なの!!」


 リュシーは慌てて走って行ったので、言われるがままに走っていく。そうしてノアとの距離が大分開いてしまって、立ち止まるノアにモンスターが襲い掛かろうとしていた。

 このままじゃノアが危ない。


「俺のリュシーを傷つけんじゃねーよ!!」


 ノアを心配した瞬間に聞こえた声に、私とマリアは思わず肩を震わせていた。

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