2023 07 14 浜のブローカー12
浜のブローカーTさんのこと(その12)
Tさんから預かった二点の絵画でした。作者は、小磯良平と佐伯祐三でした。8号のパステルと15号の油絵です。
Tさん曰く、「これで儲けろ。売れたら金は後でいいからな」
小磯良平のパステルが500万、佐伯祐三の油彩が2000万でした。結局、小磯良平のパステルだけ預かりました。佐伯祐三なんかは自分には高嶺の花でして、自信がありませんので。
私、「Tさん、何でこんな作品持ってるんですか?」
Tさん曰く、「バブルの頃、資産何千億円ってバブル紳士があっただろ。その中の何人かが客に居るんだな。一人なんかとうの昔に破産してよ、無一文だ。けどよ、金は無いけど美術品はあるんだな。その中から俺が金になるのを整理するって訳よ」
私、「破産すると、美術品とかも差押えするんじゃないのですか」
Tさん曰く、「無論、そうなるよ。けどよ、ポケットマネーで買ったのは帳簿にも無いし、領収書も要らない。表に出そうにも出しようもないだろ。借りたワンルームのマンションに隠した100点ほどあったな。全部で20億円ってとこだな」
私、「じゃあ、どうするんですか」
Tさん曰く、「一点、二点とかで少しだけ売って行くんだな。その代理人が俺ってことだ。手数料が二割だから、美味しいと云えば美味しい話だ。でもよ、最終的には、その爺さんの懐には入るのは20億の八割だから16憶だ。爺さんが一番美味しいんだ。その爺さん、生活保護まで受けとってやがるんだぜ。許せんだろう」
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