長屋-10

 翌日、長四郎は燐に連れられて燐の学校に来ていた。

「なんで、俺がラモちゃんの学校に来なきゃならんのよ」

「一太郎から話を聞かないとでしょ。心当たりの人物が居るのかを」

「じゃあ、俺抜きで聞き出せば良いじゃん」

「あんたの仕事でもあるんだからね!!」

「へいへい」

 長四郎はこれ以上、何を言っても燐を怒らせるだけだと思い何も言い返さず大人しく従う事にした。

 一太郎は体育館で重則と共に、バスケットボールの練習に打ち込んでいた。

「バスケットボール部なんだ」

「そうみたいね」

「クラスメイトなのに知らないの?」

「興味ない事には関心がないだけ」

「ああ、そう」

 長四郎と燐は練習が終わるのを待つ。

 三十分後、練習が終わり長四郎達は、一太郎と重則の元に駆け寄る。

「お疲れ様」燐がそう声を掛けると「あ、羅猛さん」と少し嬉しそうな声を出す重則。

「探偵さん。それから、何か分かりましたか?」

「ああ、分かったよ。ここじゃなんだから、この前、行ったファミレスへ行こう」

「了解っす」

 長四郎の提案を受けて一太郎と重則は大急ぎで片づけをして、ファミレスへと移動した。

 そして、長四郎は遺体の正体を明かした。

「有原幸信。知らないですね」

「俺も」一太郎に続いて答える重則。

「だと思ってたから、特に君たちに期待していないよ。でもねぇ~」

 そう言いながら、隣に座る燐を見る。

「私が言い出したみたいな言い方辞めてくれる?」

「だって、事実じゃん」

「え? 羅猛さんが?」興味津々に重則が長四郎に尋ねる。

「多分ね。君たちのどっちかに気があるんじゃない?」

「適当な事言うなし!」

 長四郎の足の甲を踏みつける燐。

「うっ!!」

 長四郎は痛みを堪えるように机に突っ伏す。

「大丈夫ですか?」一太郎が心配そうにそう聞くと、長四郎は無言のまま大丈夫だという意味を込めて、サムズアップする。

「それで、どうして一太郎とその」

「有原幸信」

「有原幸信さんが似ているんですか?」重信が質問した。

「それは・・・・・・」回答に困る燐。

「それは鋭意調査中」

 長四郎の回答を受け、「そうですか」と答え納得する重則。

「でさ、一太郎君の家に行きたいんだけど」

「俺の家ですか? 何で?」

「見られたくないエロ本とかあるの?」

「そうじゃないでしょ」すぐにツッコミを入れる燐。

「ま、急に押しかけるみたいな感じだから、嫌がるのも無理じゃないけど」

「そこは大丈夫なんですけど」

「ああ、あいつか」察した長四郎に対して、燐は分からず「あいつ?」と聞き返す。

「あいつだよ。あいつ」

「そう、あいつ」重則も長四郎の言いたい事を理解したらしい。

「誰よ」

「行けば分かる」

「分かる」

「分かる」

 男三人、結託したように立ち上がると一太郎の家へと移動するのであった。

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