長屋-8

「へぇ~ もう退学されていたんですね」

 長四郎は今、有原幸信が通っていた高校の教師から幸信の現状を聞いていた。

 幸信の通っていた高校は、都内の中では偏差値が少し低い学校であり生徒もやんちゃ系な子が多い高校であった。

「そうなんです」そう答えるのは、生徒指導を担当している秋元という体育教師。

「あいつは何度、注意しても直すどころか、むしろ、酷くなっていく一方で。親御さんも親御さんでしたから」

「そんなに問題のある親御さん何ですか?」

 長四郎の質問に頷く秋山は、周囲を見回して誰もいないことを確認して長四郎の横に座り話し始めた。

「ここだけの話でお願いします」

「分かりました」

「実は、彼の母親を学校に呼びつけたことがあったんです・・・・・・・」

 三か月前、幸信の生活態度が改まらないので担任と秋元を含めて三者面談を行うことになった。派手な服に身を包み高級ブランドのバッグを片手に学校の生徒指導室へと入って来た母親・有原ありはら 派手実はでみ

「有原さん。幸信君の本校での生活態度に問題がありまして、ご家庭でも指導の方をお願いしたくお呼びしました」

「あ、そ」素っ気ない返事をした派手実は大きな欠伸をする。

「幸信君は授業態度も悪く、勝手に帰宅してしまう。終いにはカツアゲをする始末でして」

「そうなんだ。それは、すいません」

「いや、お母さん。謝ってすむ話じゃないんですよ。このままだと幸信君は退学になってしまいますよ」

 秋元は少し脅しの意味も込めて退学のワードを出したが、派手実には意味がなかった。

 これまた「あ、そ」の一言で片づけてしまわれる。

「お母さん、良いですか? このままだと」

「あの、帰っていい? これから仕事なの」

「お母さん」食い下がろうとする秋元に「しつこいんだよ。あんた。出来の悪い遺伝子入っているんだから、仕方ないだろ。それに教育するのはそっち。じゃ、そう言う事で」

「そう言う事でって。お母さん!!」

 秋元の言葉に耳を傾けることもなく派手実は、生徒指導室を後にした。

「出来の悪い遺伝子ですか・・・・・・」長四郎は興味深そうにうんうんと頷く。

「そうです。あんな親が現実に居るとは、驚きです。てっきり、ドラマだけの話かと」

 それは、お前の人生経験不足だろと長四郎は思ったが、口には出さなかった。

「とても参考になりました」長四郎はそう言って、椅子から立ち上がる。

「あの、彼は今何を?」その問いに長四郎は肩をすくめながら「さぁ? 分かりません」とだけ答え学校を後にした。

 学校を出てスマホを確認すると、燐からメッセージが入っていた。

 至急、警視庁に来られたし。

「いつの時代の人間だよ。来られたしって・・・・・・・」

 スマホをズボンのポケットにしまうと、近くを走っていたタクシーを止め警視庁へと向かった。

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