始動-3
遠山は大学を出ると、山手線・田町駅である女性と待ち合わせをし、そのまま電車に乗り有楽町駅で降りた。
長四郎も同じ駅で降りるのだが、例の女子高生もまた長四郎と同様に有楽町駅で降り遠山を尾行する。長四郎は、女子高生は遠山のストーカーなのか、そんな事を考えながら仕事を続ける。
遠山は二人の人間に尾行されている事は、つゆ知らず女性と楽しく会話をしながら繁華街を歩いてゆく。
「暑い・・・・・・」
日が暮れてきたとはいえ、都心の暑さはそう消えるものではなく蒸し暑い中、対象を見失わないように人混みに紛れて尾行を続ける。
だが、暑さの他にも課題があった。例の女子高生だ。
すごい頻度で長四郎が居る方を振り返って来る。
長四郎は気づかれないように歩行する人を盾に身を隠し、何とか誤魔化して調査を続けていく。
そうこうしていると、遠山はとあるイタ飯屋に入った。当然、それに続く女子高生。
女子高生が対象にバレるのは時間の問題だな。そう思いながら、店の前を通り過ぎ少し間をおいて入店した。
店は満員で店員から相席になると言われ、渋々、了承すると相席相手は・・・・・・
「あ、盗撮魔」
「盗撮魔って・・・・・・君こそストーカーしているじゃない」長四郎はそう反論する。
「ストーカーじゃないし。私は浮気調査しているだけなんだから!」
「声が大きい」こめかみを抑えて長四郎は女子高生から眼を逸らす。
「ごめん・・・・・・」
女子高生はしおらしくなり、下を向いて反省する。
「全く」
長四郎が遠山の方へ視線を向けると、相手女性だけ座っていて遠山の姿はなかった。
「あ!」
女子高生も気づいたのか、慌てふためく様子を見せるのだが長四郎はどこに行ったのかを察しているのか。
女子高生とは真逆の様子で、店内をキョロキョロと見回す。
そして、トイレに一人の女性客が入って行くのが見えた。
「女子高生、安心しろ。お目当てはトイレだ」
「なんで、分かるの?」
「溜口!? まぁ、良い」
「良いのかよ」
「女の子、一人ほっぽいて逃げ出すとは最低すぎるやろ」
「浮気しているのは最低じゃないっていうの?」
「そうは思ってませんよ。でも、今、挙がっている問題とは別だろ?」
「もういいや、あんたの言っている事が本当か。確かめてくる」
女子高生はそう言って立ち上がる。
「女子高生。名前は?」
「
「珍しい苗字だな」
「じゃかあしい」
それだけ言い捨てると、燐はトイレへと向かった。
燐がトイレに入ったであろうタイミングで遠山が出てきた。
「バカな奴だなぁ~」
長四郎が水を飲んだその時、トイレから燐の悲鳴が店内に響き渡るのだった。
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