第159話 長の机
『ロブスター型怪獣』の購入者であり、その支払元の会社の男性が小屋へやって来た。
社長が入り口でお招きすると、平太郎一同は立ち上がり頭を下げる。
「今日は我が社の都合に合わさせてしまい申し訳ございません。」
そう言って背広姿の男性も頭を下げ、ちょっとした会話の中でそこにいる皆で座った。
どうやら向こうの会社はメカ外部パーツとしての兵器を一時期大量に購入してしまった為現在自由に使えるお金が少なくこの様な支払いになったそう。
そんなことを小話の中で知りながら、長机を囲う者たちは本題へと入った。
「何せ数がありますので駆け足になるかも知れませんが。まずはこれなんてどうでしょう。」
買い手の会社員は手に持ったタブレット端末を相手側に向け机の真ん中に置いた。
そこには大きく筒状の兵器の画像が表示され、その下に型式番号、重量、耐用年数などの文字が細かく書かれていた。
「これは?」
平太郎が問う。
「ざっくり言うとメカ用の火炎放射器ですね。」
向かい合う二人が会話する中、長机の両端の二人はそれぞれの機器の上に手を走らせていた。
「この兵器なら『ニ・モ』で使えます。」
「『オオガ』も搭載出来ます。」
二人は作業を止め、殆ど同時にそう言った。
「どっちでも使えるか。としたら実戦でどう扱うかだが...射程は?」
今度は源三が訊ねる。
「はい、この様な感じで。」
相手の会社員はタブレットを動かすと、怪獣との戦いで実際にそれの放たれた画像を数枚表示させた。
「だがこの距離なら『ニ・モ』も『オオガ』も積んである機関砲でどうにかなりそうな感じもあるな。」
「でしたら!」
対面の男性は別の兵器を画面に出した。
すると両側のメカを担当する二人が、再び手を動かしそれぞれのメカで使えるかを確認する。
「この光弾射出兵器ですが今の度重なる重武装化された『ニ・モ』だとかなり機動力が落ちると思われますよ。」
「『オオガ』は四足歩行モードでなら問題なく扱えます。」
二人の手際の良さに平太郎は一人圧倒される。
「でもやっぱり両方のメカで使える方のが良い気がするんだよな。」
悩みながらに源三がそう言うと、向かいの男性は端末を動かし更に別の兵器を提示した。
「このワイヤーを射出する機器なんてのは?」
「実戦でどう立ち回ればいいか想像がつかんな。」
「それなら比較的軽量なメカ用ランスはどうでしょうか?」
「近接武器か、『ニ・モ』でどう扱う...?」
それからも次々と兵器が提示されていくが、片方のメカでしか搭載できなかったり、源三の納得が余り得られない物もあったりと兵器選びは長丁場となっていた。
その為長机の上にはそれぞれに湯呑が置かれ、中にはいつの間にか半分程度まで減っているものもあった。
「それではこの『外付け追加ブースター』はどうでしょう。見た目の通り殺傷能力はなく、メカそのものの推進力を上げるエンジンとなっております。」
少し悩んだ後で向かいの男性がそれを画面に出した。
覗き込む平太郎と源三。両隣の二人がパソコンやタブレット端末を操作する音の中、視界の端で源三の眉が僅かに動いたのを感じた。
「『オオガ』各部で扱えます。」
「『ニ・モ』も殆ど問題なく使えます。」
それを聞いて源三の目が少し開いた。
「これ!これがなんだか一番しっくりくるんだが、どうだ平太郎は?」
「まあこれで『ニ・モ』がより飛行系の怪獣に強くなれそうだなって思ったけど、この外部パーツは攻撃面を追加するものじゃないし、それ以上は俺にはわからないよ。だからじいちゃんがいいと思うなら。」
「なら、これにしよう!...いいですか社長?」
源三は立ち上がり、社長と友子をデスクから呼んだ。
彼らが長机に加わり、全員で確認や検討をした後、この商談は『外付け追加ブースター』を支払いと同時に受け取るという事で幕を閉じた。
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