第29話:幸せはこれからだよ。

「あのさ・・・ひとつ聞いていいか?」


「なに?」


「沙都希ってハーフなのか?」


「そうだけど・・・言ってなかったっけ?」


「聞いてない・・・」

「さっきのお母さんがフィリピン人って聞いて、ハーフ?って思ったから」


「え?ダメなの?」


「ダメなんかじゃないよ・・・ダメどころか・・・そうか俺の彼女ハーフなんだ」


「なに?・・・」


「いや、最初沙都希を見た時、日本人離れした顔してるな〜って思ったには

思ったんだけど・・・」

「沙都希に見とれてて、今まで確かめそびれてた・・・」


「おかしいな・・・言ってなかったっけ?」

「ハーフって別に珍しくないよ」


「セブンティーンとかananなんてハーフのモデルばっかだよ」


「え〜そうなんだ・・・俺、ファッション誌とか読まないからな」


「美容師なんでしょ・・・ファッションにも興味持たなきゃ」


「あ、そうか・・・そうだよな、これからそう言うことも興味持つよ」


「ってことは・・・子供が生まれたらクウォーターだ」


「だね」

(子供って・・・まだ早いけど・・・)


沙都希は本当に幸せを感じていた。

今まで、チャンスがあっても何かに阻まれて、前に進めなかった時もあった。


(でも今度は、私と祐に障害物はないんだよね・・・)

(もし、何かあっても祐とふたりで乗り越えていけばいい)


今の沙都希の心は病院の窓から見える空のように曇りなく晴れ渡っていた。


その後、祐は店があるので一時帰宅した。

そして次の朝、沙都希を病院に迎えに行って、沙都希は無事退院した。


お店に帰ってからも休養と栄養が必要としばらくは店の二階で養生していた。

その間にお店をお休みにしてリニューアル「改装工事」をしてもらっていた。


お店の看板のロゴが新しくなって「Hair salon・ SATSUKI」に変わった。


なにより一番のメインイベントは沙都希と祐の結婚式が秒読み段階にはいった

ことだろうか。


(私の幸せはこれからだよ・・・)


沙都希の心は一点の曇りもない清々しい気持ちだった。


沙都希は店のリニューアルが終わる頃には元気になって、また店に出ていた。

お店に最後の客がいなくなって 沙都希は床に落ちたお客さんの髪を

掃除していた・・・。


つづく。

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