第10話:沙都希と祐。

反町家は母子家庭で沙都希さつきよりひとつ歳上の23歳の息子がひとりいた。

息子の名前は「反町 祐そりまち ゆう


祐は今、お店の後を継ぐために理容美容専門学校に通ってるって喜代さんから

聞いていた。

でも美容学校へ行くには適齢期は過ぎていた。


美容学校に通う生徒は年齢はさまざまで、年を経た男性や女性も通っていたりする。

女性の中には結婚した相手が美容師で、旦那さんのバックアップをするために

美容師の免許を取る女性もけっこういたりする。


祐もそんな感じで学校に通ってるんだろうって沙都希は思った。


理容師とか美容師って聞くと、あまり肉体労働には向かない草食系が多いって

そんなイメージだが、実際はそんなこともない。

たしかに美容学校の生徒の中にはジェンダーな人もいたりするが・・・。


美容院はお客さんに女性が多いと言うこともあって、ソフトなイメージを持った

美容師のほうがそれはそれでいいのかもしれない。


だから祐も(さぞかし日に当たってないモヤシ息子なんだろうな) って沙都希は

思った。


沙都希から、そう思われてる祐も沙都希が来ることは喜代さんから聞かされていた。


はじめて沙都希がお店に初出勤した時、息子の祐は学校に行っていていなかった

から、祐のイメージは沙都希の決めつけにほかならかった。

お客さんは以前の美容室のようにセレブの奥様が来るわけじゃなく、常連さんや

近所のおばちゃん、セレブとは違う世界で生きる客が大半を占めていた。


お店に来たおばちゃんに、「このお店若返ったわね」って言われたりした。

(このおばさんは昼間に店に来るから、祐のことを知らないんだ)って沙都希は

思った。


午後になって、祐が学校から帰ってきたので、さっそく喜代さんから紹介された。


祐の印象は・・・沙都希の想像した印象とはまるで違っていた。

てっきり激やせの草食男子だって思ってたのに・・・完全にはずした。

祐は見るからにスポーツマンタイプの男で身長も高かったし、体格もがっしりして

いて美容師には似つかわしくない男子だった。

しかもかなりのイケメンだった。


エグザイルのメンバーにでもいそうって沙都希は思った。


だから沙都希は祐のイメージを勝手に決め付けていたことを反省した。

でもなんでこんな肉食系男子が、母親のためとは言え美容師をやってるんだろう?


「息子の祐よ・・・仲良くしてやって」


「んで、今日からうちで働いてくれることになった・・・いとう?・・・いとう、え〜とさつ・・・」


もたもたしてる喜代さんを見かねて沙都希が挨拶した。


「はじめまして、伊藤 沙都希いとう さつきです、よろしくお願いします」


「そうそう、さつきさん・・・」


沙都希は丁寧に挨拶したが、沙都希を見た祐は固まったままそこにつっ立っていた。


つづく。

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