第84話 ティフォーネの助力。

 そんな風に急速に戦争準備を整えている中、一人我関せずとのんびりしている女性の姿があった。それはエルの師匠でありエンシェントドラゴンロードであるティフォーネだった。

 彼女はその辺の店の食べ物を食べ歩き、好き勝手に酒や紅茶をガブ飲みしながら優雅にお気楽な日々を過ごしていた。

 彼女にとっては関係のないことであろうが、それでもこちらは戦力が欲しい所だ。

 何か手助けはしてくれないか?とエルはダメ元で彼女に頼んでみる。


『というわけで師匠。何か力を貸してくれるとありがたいんだけど……。ダメ?』


 小首を傾げて可愛くおねだりするようなポーズをするエルを見て、彼女もうーんと腕を組んで考え込む。これがただの人間や亜人なら知ったことがボケ、と一蹴するのだが、親友の息子であり、弟子ともなれば話は変わってくる。


「まあ、私がちょっと本気出して王都?にとりあえず一撃入れて根こそぎ吹き飛ばせばいいのでは?私的には何千人ヒトカスどもが死亡しても別に何とも思わないのですが……。でも王都を吹き飛ばすと塵が大気を覆って「永遠の冬」が来るかもしれませんね……。それは私的にも面白くありません。」


 つまり、簡単にいうと「核の冬」である。大規模な爆発によって猛烈な塵が巻き上がってそれによって太陽の光が遮られ、大規模な寒冷期が訪れてしまうことである。

 その大規模な寒冷化により、植物が光合成できずに枯れ、動物や人間たちに大規模な被害が及んでしまう形になる。

 歴史上でも大規模な火山活動により「火山の冬」「夏のない年」などが起きたとされている。そして、そうなれば当然凶作による食糧不足からの一揆や社会不安、食料を求める大規模な戦争が起こるのが目に見えている。

 しかも王都をただ吹き飛ばしても人類至上派の思想までは根絶できないだろう。


「暴風で塵を退けるのはできると思いますが……。そちらにとっても旨味が少ないでしょう?だからまあそちらに対する戦力を供給しましょう。

ええと……速度と攻撃力に特化した私のワイバーン、後は防御力と攻撃力に特化した外骨格地竜(対空攻撃完備)を与えましょう。地竜はシュオールの担当ですが、まあかわいい息子のためだから問題ないでしょう。」


彼女は良心の欠片もない文字通りの人でなしだが、やってもまずい事、やっても旨味が薄いことぐらいは知っているらしい。

そのため、エルに対して戦力を提供するという事でお互いにウィンウィンにする形にしたらしい。


『ありがとう師匠!!さすが師匠やで!!よっ絶世の美女!!経産婦美少女!!』


そのエルの言葉に、ティフォーネはふふん、と胸をそらしながら満足そうに頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る