第46話 コープスとレギオン
(うーん、犬……。犬かぁ……。確か某作品だとえのころ飯とかあったっけ……?)
某作品では、腹に米などを詰め蒸し焼きにする「えのころ飯」というのもあるが、流石に犬を食べるのは日本人としては流石にどうか……?と思ってしまう。
この世界では犬食文化はあるのかぁ、まああっても不思議じゃないが……、とか思いながらも、ブラックドッグの残骸は消滅しているのが目に入る。
あれでは到底食べることはできない。まあ仕方ないか、とエルはため息をつく。
念のため、塩は大量に持っているので、何か食糧になりそうなものがあれば《調理》魔術で食べられる……はずだが、そんな彼の考えを他所に次の階層ではエルの食欲を削ぐ存在がいた。
「ガァアアア……!!オオオ……!!」
それは何十もの死体が融合して積み重なって群体となって蠢いているおぞましい存在。すなわち、死体の塊であるコープスである。
そのコープスを守護するように周囲に多数のスケルトンやゾンビたちが存在している。おぞましい肉塊とそれを取り囲む死霊の軍団。それに対抗するためには、神官が有効的ではあるが、いないというのなら仕方ない。
ゾンビやら腐った肉体が何十もの重なりあったコープスやら見て、流石のエルもうぇーという顔になる。
《おぃいいい!!グロ映像見せるんじゃねぇええ!!》
《ワイ肉を食べながら見てるが食事が食えなくなる。》
《グロを出すのならあらかじめ言ってくれぇええ!!》
『よっしゃ。ああいった手合いにはこれが有効的だな。《重力魔術》ッ!!』
そのエルの言葉と同時に、コープスやスケルトン、ゾンビたちにズン!と重力がかかり、彼らを押しつぶさんと襲い掛かる。
柔らかい腐りかけた肉体を所有しているレギオンやゾンビたちは、ベキベキベキと腐りかけた肉体と共に骨もへし折られていく。
よっしゃこのまま抑え込めるはず!勝ったなワハハ!!と彼が心の中で呟いていると、そのコープスから無数の亡霊たちが出現して亡霊たちが交わって巨大な悪霊「レギオン」へと変貌する。
『あ、悪霊だと!?ま、また厄介な……!こっちには神官がいないのに……!!』
そう、彼らの欠点としては、神官がいないというのが大きな欠点である。
おまけに、悪霊に対しては重力魔術や石壁などもいまいち効果が薄い。ましてや弓矢やクロスボウなどさらに薄い。
『憎い憎い憎い死ね死ね死ね……!!』
レギオンの無数の口はそこから無念・憎悪の念を吐き出し、それが呪詛魔術となってエルたちに襲い掛かる。その呪詛魔術で彼らは精神力が削られているが、その程度でどうにかなるほど、彼らの精神は弱いものではない。
ユリアが魔法の矢で攻撃を仕掛けているが、それでもいまいち効果が薄いのがはっきりと理解できる。何か悪霊を祓えるようなものはないか……とふとエルは荷物の中に大量の塩があるのに気づく。
(そうだ!悪霊と言ったら塩じゃん!!確かユダヤのほうにも塩を使って悪霊祓いをすることがあったはず!この世界でも通用する……かも!!)
日本で悪霊を払うと言ったらやはり塩であり、葬式の後などに塩を使ったり、盛り塩をして悪霊を払うというのは極めて有名だ。
西洋でもユダヤ教などでは悪霊を払うために塩を使ったり、聖水などにも塩が使用されていたり、イギリスには、玄関ドアの下に棒状に塩を撒くという悪霊退散のおまじないもあるため、そういった概念もそれなりにある……はずである。
ともあれ、それを期待して、エルは荷物から塩を取り出すと、それをレギオンへと叩きつける。
『そぉい!!悪霊退散!!悪霊退散!!』
ドーマン! セーマン! ドーマン! セーマン!と心の中で叫びながら、エルは投げつけた塩の入った袋は見事にレギオンに命中。
霊体で半透明で攻撃をすり抜けるレギオンだが、さすがに浄化の力を持った塩を食らってはまともにいられないらしく、レギオンはそのまま消え去っていった。
消滅したのか逃げ出したのかは分からないが、それでもこちらの勝ちなのは間違いないだろう。
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