第24話 マミィ、はしゃぐ
大迷宮の中、シュオールの鱗を体内に乗り入れて霊的な位階も肉体的強度も上がったとはしゃぐエル。
そんな彼らをじっと見つめる一匹の小型のトカゲ……に似た生き物。
魔術師がよくよく観察すれば、それは何らかの存在が作り上げた監視用の使い魔であることが分かるだろう。
逆に言えば、専門の魔術師がそれくらい注意深く見なければ判明しないということだ。普通のダンジョン攻略でそんな余裕などあるはずもない。
そして、そのトカゲの使い魔の視覚を通して大迷宮の外で喜んでいる存在がいた。茶褐色のロングヘアを緩やかなウェーブにしている、緑色の瞳を豊満な肢体をしている美女、それはエルの母親である地帝シュオールの人間体だった。
「……ほっ。どうやらうまく撃退できたようじゃな。うむ!!さすがは我が息子!!天晴れじゃ!!凄いぞ我が息子!!凄いぞカッコいいぞワハハー!!」
彼女の尻尾はご機嫌にブンブンと振り回され、ビタンビタン!とあちこちに命中させてあちこちを破壊しているが、ご機嫌な彼女はそんなことを気にしている余裕もないらしい。
実際のところ、まさか息子が人間の仲間を連れているとは予想していなかったので、鱗に遠隔から魔力を送り込んでちょうどいい感じ(彼女視点)に強さ調整をしたのだが、うまくはまってくれたらしい。
比較的親バカな彼女にとって、自分の息子が活躍しているところは、まさに絶頂ものであるらしい。
うっひょー!と散々喜んだ挙句、彼女はようやく落ち着いたらしく、はぁはぁと息を切らす。
「よし!頑張ったようじゃし、沢山ご褒美を上げんとのぅ!ええと、新しい財宝を転移させて、ワシの鱗もバーンと置いておこうかのぅ!!」
そんな彼女の後頭部を、ごつんと叩く何者かが存在した。誰じゃ無礼な!ワシ、エンシェントドラゴンロードぞ!と振り返ってみると、そこにはジト目で、竜骨杖を持ったティフォーネの姿があった。
そんな彼女の姿を見て、シュオールは思わずげえっと声を出す。
「な……何でお主こんなところにおるんじゃ!!?」
「そりゃ貴女ができることは私もできますよ。大陸間を瞬間転移ぐらい、私たちなら不思議じゃないでしょう?」
そう言いながら、ティフォーネは、シュオールの言葉を聞いていたのか、はぁ~と呆れたようにため息をつき、肩を竦めながら言葉を放つ。
「やっぱりダメですね。ダメダメです。貴女がやったら甘やかしすぎて独り立ちも何もなくなりそうですね。貴女は監視だけを行っておいてください。私が彼に直接干渉をしてみましょう。」
「なっ!貴様なんかのろくでなしが干渉したら何が起こるか!た、確かにワシが前面に出たら甘やかしすぎるかもしれんが……!!」
「それなら私の方がましでしょう?私が何かやらかしたら、それこそ貴女が出てきて止めればいい。私も流石に仲間……ママ友の息子に悪意あるちょっかいはかけませんよ。」
ううむ、とシュオールは腕を組んで唸りを上げる。確かに天上天下唯我独尊な性格であるティフォーネではあるが、仲間の子供に悪意あるちょっかいをかけるほど悪辣な性格ではない。
彼女たちは、この世界で四体だけしか存在しない仲間なのだ。それをわざわざ仲を乱すようなことは行わないだろう……常識的に考えれば。
「なるほど、それは理解した。で?本音は?」
「面白そうな玩具があるので、ちょっかいかけに来ました!以上終わり!」
そんなティフォーネに対して、こいつぅ♡といいながら竜語魔術によるクラビトンカノンを叩き込んでいくシュオール。
それに対して、ティフォーネも森内を高速飛行で掻い潜り飛行して、あるいは空間歪曲でグラビトンカノンを防御しながら、キャッキャウフフ♡とじゃれあいを開始する。しばらく木々を破壊し、なぎ倒してのじゃれあいを行った後で、やるだけ無駄だな、と彼女たちはじゃれあいをやめて言葉を放つ。
(ここは二つの開拓村からは遠く離れている。いくら何でも彼女たちもそこまで無神経ではない)
「まあまあ。ともかく悪い話ではないと思いますが?私が何かやらかしたら、貴女が制止してくれればいいのですし。どうせ監視してるんでしょう?」
むう、まあ仕方ないか……と渋々シュオールは彼女の要望を飲むことにした。
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