剣の再現
ドットはアビジンやオリハルコンといった特殊な金属を扱うのは苦手なものの、冒険者個人に合わせた物を作るのは得意というゲンの弟子であるカールの話を聞いて、ミヨモやティアも自分達の装備からその話に納得するが、ゲンの冒険者嫌いはそこから始まったというのだ。
「でも待ってください、確かゲンさんはお父さん、ゴーンさんの工房を飛び出したときはすぐに自分で工房を開いてそこで作った武器は冒険者に好評だったはずです、それが何で?」
「確かに親方の作る武器は強力でそれは冒険者にうけていました、そこで思い切って親方は今のビーズの街に工房を開き、より冒険者に強力な武器を作っていました」
「あんたの親方は自分の親父が死んだことも知らなかった、って事はこの街で工房を開いたのは少なくとも10年以上前の話だよな?」
「ここではもう20年はしているって言ってましたね、実際ここは冒険者が多いし、強い武器をどんどんと作っていました、しかし僕が弟子入りしてすぐに事件が起きました」
カールは自分が弟子入りした頃のゲンに起きた事件についての詳細をニラダ達に話し始めた。
ある日ゲンは冒険者より
「何だって?アビジンとオリハルコンを合わせた剣を作ってくれだと⁉」
「頼むぜゲンさん、ほら俺達もAランクまで上がったし、今後のクエストが上手くいけばSランクまで上がれるからよ」
「だがなあお前さん程の腕前でもその2つの金属を合わせた剣を扱うのは難しいぞ、何しろ勇者の剣だからな」
「そ!勇者の剣!ゲンさんの腕前があればその勇者の剣を再現できるはずだ!」
「勇者の剣か!よし見ていろ、それでアビジンとオリハルコンは持っているのか?」
「もちろんあるぜ、ほらよ」
「うーーーん、少し加工しねえと分からねえが、本物っぽいな」
「そんじゃ頼むぜ」
まずその一連の話に対しニラダ達はカールに対していくつか思った事を話した。
「アビジンとオリハルコン、まさかそんな事が」
「ゲンさん、勇者の剣を再現しようとしたのね」
「そう、そこなんです」
「え?」
「僕も当時は師匠の手伝いで有頂天になって気付かなかったけど、勇者の剣、それに親方もその冒険者も僕達も囚われていたんです」
「勇者の剣の再現……」
「剣自体の再現には成功したと思いました、しかしそれはその冒険者を転落させ、師匠が武器作りを止めるきっかけになったんです」
勇者の剣の再現、一見偉業とも思えるがそれが多くの不幸を呼んだともいえるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます