本当の理由

 ニラダは本来なら放火が原因である火災により命を落としていたが、その際に師匠であるガンディーにより助けられた事をドットより知らされる。


「俺は師匠に……命を救われていたのか……」

「ああ、お前は煙を多く吸う前に助け出されて治療の甲斐もあり、なんとか一命をとりとめたんだ」

「だけど、俺の両親は……」

「ああ、兄貴でも救出が間に合わず死んじまった……」


 ガンディーでも救出が間に合わずニラダの両親は火災によりその命を落としてしまった。そしてその後の話をドットは続ける。


「放火犯はすぐに捕まり、投獄された。その後の事は分かんねえがまあ処刑されたかもしれねえな」

「うん……」

「問題は兄貴だ、その後は自信満々さは影を潜めて覇気のない日々を送っていたぜ」

「師匠が……」


 師匠であるガンディーはニラダを救出したものの、その後覇気を失った生活を続け、それについてドットは自分の考えを話す。


「ニラダ、その後の兄貴とは俺もあんまり話していねえから、あくまで俺の考えだが、きっと兄貴は結婚したとはいえ、かつて自分が惚れた女を救えなかった事、そしてまだ幼いお前の両親を救えず、お前を孤独にしてしまった事を相当悔いていたと思うぜ」

「でも師匠はなんとか俺だけでも助け出してくれただけじゃなく、俺に生きていける力をくれたんだ、十分すぎる事をしてくれたよ」

「実はなニラダ、ある時俺は腑抜けた兄貴が見てられなくて、お前の様子を見てくるようちょっと無理やりだけど勧めたんだ」

「おじさん……」

「そしたらよ、お前は相当辛いはずなのに孤児院の子供達と元気に遊んだり勉強する様子を見てな、また冒険者として歩みだしたんだ、兄貴に生きる力と希望を与えたのはお前なんだ」


 ニラダが生きる力をもらったと主張する反面、ガンディーもまたニラダより生きる力、そして希望をもらったと話し、更にドットはその後ガンディーがどういう事をしたかを話す。


「その後の兄貴は最初は匿名でお前のいた孤児院にクエストで得た報酬を寄付していたが、ある時直接お前を弟子入りする事を決めた。きっとお前やお前の両親に対する罪滅ぼしでな」

「いや、それだけじゃないよ」

「ニラダ?」

「師匠は修行はスパルタだし、結構無茶ぶりもしてきた、用事なんて全部俺に押し付けていたんだ」

「おいおい、随分ひでえ言いようだな」

「だ、だからさ……俺を1人にした後ろめたさ……とか、好きな人の……子供とか……だけじゃなく、俺を冒険者として……魔法使いとして……本当に強くし、したかったんだよ。誰の為でもない、本当に俺の為……に、さ」


 ドットの話を聞き、ガンディーとの修行の日々を思い出し、涙の止まらないニラダであった。

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