感覚強化

 デグの村まで食料を運搬する事になったニラダ達の馬車は食料運搬用の馬車を囲むようにして最後方に配置して移動している。


 そんな中、ニラダは山には飛行系の魔物が生息している確率が高く、空からの襲撃がある事を危惧するがどうやって空からの襲撃を防ぐかジャンに疑問をぶつけられる。


「ニラダ、お前は本当なら食料用の馬車の中で魔物の空からの襲撃に備えるつもりだったようだけど、今こうなっている以上どうやって備えるつもりなんだ?」

「本当はあんまり使いたくなかったけど、補助魔法を山道に入ってから使おうと思っている」

「あの補助魔法?一体どんな魔法なんだ」


 どうもニラダは少し使うのに躊躇している補助魔法があるようで、ジャンに尋ねられその魔法について話す。


「実は補助魔法には身体能力を上げる魔法以外にも五感、感覚を研ぎ澄ます事ができる魔法もあるんだ」

「なんだ、別に補助魔法なら不都合のある点はねえんじゃねえのか?」

「いや、使用中だけならともかく……」


 ニラダが少し言いよどんでいるとティアがその理由を指摘する。


強化を重ねし者サムアップバッファーの事ね」

「ああ、肉体の強化なら大歓迎だが、感覚も強化されると普段からコントロールできるかどうか不安になるな」

「聴力とかが強化され過ぎると多分ニラダにとっては雑音が多くて苦しくなるわね」

「だから正直使っていいかどうか迷っている、ミヨモの魔力感知スキルは魔法が使用できる魔物でないと効果がないからな」


 ニラダの話を聞いてミヨモも口を出す。


「そっか、それに強化を重ねし者サムアップバッファーの効果で感覚が強化されると、ずっとそのままだもんね」

「ああ、もうすぐ山道だし、どうすればいいかと思っている」

「なあ、ニラダ、最後に補助魔法を使ったのはいつか覚えているか?」

「確か1週間くらい前だったと思う、それが……はっ!そういう事か!」


 ジャンより最後に補助魔法を使った時期を尋ねられて思い出すと、ニラダは何かを思いつき、それを他の仲間に話す。


「そうか、今別の補助魔法を使えば、次にスキルが発動するのは3日以上先だ」

「そういうこった、っていうか自分のスキルくらいちゃんと把握しとけよ」

「いや、ゴメン、そうだな今別の補助魔法を使ってそれをスキルの対象にすればいいんだ、それなら、フォースアップ!」


 感覚が研ぎ澄まされる魔法を使う前にフォースアップを使用しそれをスキルによる効果の対象にし、その後聴力強化の魔法をニラダは使用し、日常における強すぎる感覚強化をなんとか阻止する事に成功する。

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