指定群生地

 新たにニラダ達のパーティー、『成長しあう者達』に加入したヒーラーのティアの懇願でニラダ達は薬草採取のクエストに挑む事にした。


 薬草採取は冒険者登録した者しか立ち入れない、森や山で行われることがほとんどであり、今回ニラダ達はデデンの街の近くの森に赴いていた。


「今回のクエストの対象の森はここだ、まだ俺達のランクを考慮すると街から近いここが妥当らしい」

「クエスト達成条件は10以上の薬草採取だけど私としては報酬の事もあるし、もっと欲しいわね」

「確か冒険者の取り分は3割だったよね、ティアさんはどれくらい欲しいの?」

「小さいところとはいえ、子供は何人もいるし10は寄付したいわ」


 ティアの希望の薬草の数が10以上だと聞いて、ニラダは必要な数、そしてそれを集めるのは困難だと指摘する。


「最低でも30以上は採取しないとな、そしてそれだけ集めるのは時間もかかるし、魔物との戦闘も多くなり困難だな」

「魔力が続く限りは治癒は任せて、戦闘はあなた達を信じる」

「じゃあそろそろ行こうか」


 ニラダがそう発言すると3人は森の中に入り、薬草採取のクエストを開始する。


「さてと、まずこれだな」

「ええ、それで間違いないわ、ミヨモもこの形を覚えてね」

「うん、これが薬草なんだ私初めてだよ」


 ニラダ達はとりあえず生えている薬草を次から次へと採取し、各々のマジックボックスに収納していく。


「そういえばさ、この薬草って取りすぎて、なくなったら他に必要な人には届かないって事はないの?」

「ミヨモ、ここは『指定群生地』といって、その心配はない場所なんだ」

「『指定群生地』?」

「昔、神の加護を受け、治療薬の元となる薬草が人の手がなくても成長しやすい地の事よ」


 ニラダとティアより師弟群生地についてのレクチャーを受けて、ミヨモは感心して喜びの声をあげる。


「だけど、いい事ばかりじゃないわ、魔物にとっても薬草はいいもので、それを求めて大量発生しやすい地ともなったのよ」

「だから冒険者以外は基本的に立ち入り禁止として、クエストの対象の場所としたんだ」

「そうなんだ」

「だけど、ここで採取した薬草は教会や薬師に納品されることがほとんどで、個人で運営している孤児院等にはなかなか回らないのが現状よ」


 ティアは自分が育った孤児院や、他の孤児院への現状をニラダ達に話すと、それに対してニラダが返答をする。


「だから、こうして来たんだろ」

「そうだよ、私達もしっかりお手伝いするからティアさんの孤児院の子供達が元気に過ごせるように頑張ろう」

「ええ、そうね」


 少しづつ薬草は採取するがまだティアの目標値には届かないでいた、更に奥へとニラダ達は進む事とした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る